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鬼灯憂乎(現/小鳥廉)が過去(2003.12〜2009.2の6年間)に発表した「鋼の錬金術師」
「天元突破グレンラガン」と「スーパーロボット大戦」「ブラスレイター」に関する、
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内容は「鋼の錬金術師」のみで、落描きから18禁、エログロにイロモノまで
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大総統府のビルの屋上で独り座り込んで、青い空を流れてゆく白い雲をただぼんやりと、グリードは見詰めていた。
毎日の仕事と言ったら、侵入者を発見し撃退するだけ。
そうそう侵入者など毎日現れる事などないし、更にはエンヴィーの箴言で、彼が動いて良い場所が限られていた為に、地下の施設か与えられた自分の部屋、そして大総統府の一部の施設しかいる場所がなかったのだ。
「あーーー ひ ま だなあ…」
眩しそうに太陽の陽射しから眼を背け、大きく溜息を吐くとぽつりと呟く。
地下にずっと篭っていたら、身体にカビが生えてしまう。
彼はそう思いつつ、こうして時折地上へ出て来ては、青い空を眺めていたのだ。
それは、自分の中にいる15歳の少年へのささやかな気遣いでもあったかもしれない。
この青い空は何の制約も受けることなく、そして国境など関係ないところで、ずっと続いているのだ。
砂漠を越えて、少年の故郷であるシンにも続く、青い空。
大総統との会話の時に、一度だけ意識が浮上して来たものの、あれから一度も浮上して来てはいない。
静かな湖面を思わせるかの様に、そこに存在はしているが、ブレることなく静かに意識が横たわっているのだ。
会話をしようと思えば出来る。
しかし今の所、自分から率先して話そうとはして来ない。
警戒しているようで、そいうったピリピリとした意識には触れないのだ。
奇妙といえば、奇妙な存在だし、奇妙な関係でもあった。
「おや、人がいましたか…」
座り込んで青い空を眺めながら思案に暮れている所へ、突然、背後から人の声がした。
「…んあ?」
こんな所で時間を潰すのは、自分くらいだと思っていたグリードは、酔狂な客人に向かって首を反らせて返事をしてみた。
「…あんた…誰?」
首を反らせて視線を移した先には、長い黒髪を一纏めに括った白いスーツの少しスカした男が立っていた。
「人に名前を問う前に、ご自分の名前を名乗ってからにしては下さいませんか?」
口元にだけ笑みを湛え、目元は少しも微笑んでいない笑顔でグリードの方を見詰め、何処かわざとらしい紳士然とした仕草で反対に問いかけてきた。
「あーー 済まねえな」
グリードは、その仕草とその態度がなんとなく気になり、軽く謝ると体勢を整えて、身体の向きを変え真正面からその男を座ったままではあるが見据える。
「俺の名前は、グリード。故在って、此処に存在る」
そうグリードは返すと、ゆっくりと立ち上がり着衣の乱れを整えてから、再び目の前の男の方を向く。
「ああ。あなたが」
目の前の男は、そう漏らすと、1人で納得しているような素振りでじっとグリードを見詰めた後、何度か頷くと口元を薄っすらと緩め、矢張り1人でぶつぶつと口の中で何かを呟いていた。
そんな彼の様子に、思わずグリードは眉間に皺を寄せたが、その様子に気付いたのか
「すみませんね、あなたのことはお聞きしていますよ。エンヴィーさんから。いけ好かない変わり種の仲間が出来たって」
そう返してくると、手を差し伸べてきた。
その掌には、練成陣が刻み込まれていたのだ。
グリードは一瞬、その掌を見詰め、差し出そうとした手を引っ込める。
「大丈夫ですよ。片手だけでは発動しません…… 多分…ね」
くすり…と微笑んだその顔は、先ほどとは異なり、作られた仮面のような笑顔ではなかった。
そして、その薄く微笑んだ顔に安堵したグリードは口元を綻ばせ警戒心を解く。
「エンヴィーのヤツ、俺のことをそんな風に言いやがったのか。いけ好かないのはどっちだってーの」
何処かシニカルな笑みではあったが、人の良さそうな表情に小さく溜息を吐いた男は
「キンブリーです。ゾルフ・J・キンブリー。以後、お見知りおきを」
と、慇懃な態度に戻る。
グリードが、彼が想像していたような男ではないことにある意味、落胆したのかもしれない。
しかしそんなことなど知るはずもないグリードは、そんな彼の心の機微など知る由もなく。
「キンブリーね。一応覚えとくよ。まあ…こうやって話すことは殆どないだろうけどさ。ま、またなんかあったら、その時はよろしく頼むわ」
引っ込めた手を再び差し出すと、キンブリーと名乗った男と握手を交わす。
人ではないホムンクルスの肌の冷たさに、キンブリーは少しだけ鼻白んだが、そんな素振りをおくびにも出さず、
「そちらの都合がどのようなものかは判りかねますが…そのような物言いをされるのなら、そうなのでしょう。もしもまたお会いする機会がありましたら、こちらこそよろしくお願いしますよ」
目を細め、そう返事をした。
「あ。そうだ。あんた…なんか甘い物持ってないか? 事情があって俺はちいっとばかし、この建物の外へは出られなくてね? 欲しいものもままならねえんだ」
グリードは、握手を終えたその手で思い出したようにキンブリーの手をぎゅっと掴み問いかける。
本来、食物を摂取する必要などないこの身体ではあったが、多少の食事はエネルギーを直接取り入れるに手っ取り早い為、ちゃんと食事をするのだが、嗜好品だけはそういうわけには行かなかった。
そして、何故かこの身体は非常に甘いものを欲しがるため、グリードはとても困っていたのだった。
「おや… 甘い物ですか。そうですね…」
突然のその問いに、少しだけキョトリとした表情を浮かべるが、直ぐに合点が行ったのかそう呟くとコートのポケットへ手を差し入れる。確か昼間、所用で街へ出て花売りの子供から花束を買ったとき、サービスで貰ったキャンディがあったはずだった。
「持ち合わせは、これしかありませんが、これでよろしいですか?」
キンブリーがそう言ってポケットから取り出して見せたのは、小さなアニスキャンディーの包みだった。
「…済まねえな、それで十分だ。ありがとよ」
グリードは本当に済まなそうにそう言って、キンブリーの掌からその小さなアニスキャンディを指で摘むようにして手に取った。
「…いいえ。事情はある程度は知っていますからね。しかし…」
そこまで言うとキンブリーは唐突にグリードへそっと身を寄せ、
「これで、代金としておきましょう。ご馳走様」
そっと頬へとキスをして、そのまま通り過ぎ、その場から去ってゆくのだった。
「……へ?」
グリードは思いがけないキンブリーの行為に一瞬何が起きたのか判らず目を白黒させ、キスされた頬に手を添える。
「なにもんだ…あいつ…」
掌の上のアニスキャンディを見詰めながら、グリードはそう呟くしかなかった。
「あんたのその身体の主、賢者の石、探してたんだってね? ばっかだよねえ、ほーんと。探してたモノを手に入れることは出来たはいいけど、自分の体内に入れられちゃったら、国に持って帰れないっての」
暗い通り道で振り返った先に昏く光る紫闇の瞳が、ギラリと輝く。
何処からそいつはグリードを付けていたのか。
それは、口元を弓形に歪ませ、心の奥底を覗いてくるような笑みを浮かべた。
「…っ!」
一瞬のグリードの怯みが相手を増徴させたのか、その仕草は確実に見下したものになっていた。
「で、あんたはそんなそいつに絆されて、いらんことしてたりするんだよね…」
覗き込んでくる目の色が、薄っすらと色が変わる。
紫闇の瞳から、感情の無い薄紫色に。
“逃げロっ! 嫌な予感がすルっ! そいつハ、お前が思っている以上に邪悪ダっ!”
心の中で警告が発っせられ、必死になって自由の利かない身体を動かそうとするが、主導権を握っているグリードの身体は動かない。まるで、蛇に射竦められたかの様に、身動きできなかった。
“何シてるんだっ! 逃げロって言ってるのが分からないのカっ!”
心の中で必死になって叫んでいるうちに、目の前のそれの、姿が次第にブレだして行き。
故郷でも見かけないほど女のような輝く艶やかな長い髪が。
成長途中のしなやかな筋肉が絡みつく細い肢体が。
薄く色づき戯れ言を紡がれては、否やは唱えることができないだろう口唇が。
好事家ならば黄金を積んで閨に誘い込むだろう、誘惑が具象化した闇のカタチが少しずつ歪み出し。
「聞こえないふり? それとも俺の言葉なんか聞きたくもないって言うの? ……そんなコト、ないよねぇ?」
変化を終えたその姿は、紛れも無く自分の姿で。
その姿に漸く正気に戻れたのか、グリードは僅かながらではあったが、半歩後ずさる。
しかし、相手はそんなグリードに対して、毒を含んだ薄笑みを浮かべたまま滑るように近づいて来る。
「や… や……めろ…」
変化した姿かたちでは幾ら同じであっても、何処か狂気を孕んだ歪んだ姿で。
僅かに残された平常心など、後ずさる踵の下で踏みつぶされた。
「やっぱりグリード、あんた、そいつのことが好きなんだね?」
同じ姿であっても、その笑みは何処か艶やかで、毒を孕むそれは呼気ひとつで死に至るものだ。
紡ぎ出された言葉はやや古めかしい発音ではあるものの、遠い故郷の言葉にかわりはない。
「ばっかじゃないの? たかかシン国のガキにホムンクルスの強欲様がホレるだなんて。あ、そうか、昔からそうだったもんねえ、グリードは情が深いから…」
紡がれた言葉は、グリードの心を抉る。
ただでさえ目の前にいるそいつの姿が自分を模したものであるのにも関わらず、心無い言葉を浴びせられつづければ、まだ生まれて間もない、漸く心のカタチが確立したグリードにとって、それは毒以上のものでしかない。
こみ上げる吐き気を押さえ込む。
純粋に、生理的な嫌悪。
「……やめ… エン…ヴィ……そんなのとは…違…う…っ」
なんとか搾り出すようにグリードは、途切れ途切れの言葉を紡ぐ。
今の彼にはそれが精一杯だったのだ。
しかし、それはグリードの面白いくらいに上擦った声に、弾かれたように笑いの発作を起こして身体を折り曲げだ。
俺の姿のまま。
獲物を見つけて悦ぶ獣はきっとこんな顔をしているに違いない、と、背筋を汗が伝う感触さえ、今生きている実感にすり替わり、変な安堵感がわき上がる。
「てんで純情ちゃんじゃないの、グリード。あの高慢なグリードさまはどこへ行っちゃったのかねえ」
既に以前のグリードは失われているというのにも関わらず、それは顔を、そして口元を歪めて笑う。
“辞めロっ! 俺の顔で、俺の姿で、そんな言葉を吐くナっ!”
幾ら叫んでもそいつに聞こえるはずも無く。
「じゃあグリード、あんたがそんなにそいつのことを好きならさ、俺がこの姿であんたを抱いてやるよ。うれしいだろう? 好きな相手に抱かれるんだぜ?」
軽い口調ではあるが、とんでもない提案をしてきたそいつに、グリードは大きく息を飲み身じろぐ。
しかし。
蛇のようにしなやかに蠢く腕が伸ばされ、首筋が総毛立つ。
姿かたちは自分を模していても間近で見つめる縦長の瞳孔が、自分とは違う存在なのだと教えてくれるが、もう遅かった。
「……お父様のお人形さんの癖してさ……そんな感情持つなんておかしいよね」
風に溶けていくほど幽かな声は、耳を甘噛みして囁くように流し込まれる毒以外表すべき言葉を持たず、拳を白くなるほど握りしめても血が逆流し、瞳が痛くなるほどソレを凝視する。
壁際に身体ごと押し付けられ
「うれしいだろ? シン国のガキに抱かれるんだ」
と、喉の奥で笑う声が更に掠め、同時に心が悲鳴をあげたのだった。
今日は金曜日。
あの人の来る日ダ。
給料日直後だったかラ今日はちょっと遠出して、
奮発シてデパートの地下でバラの花とボージョレ・ヌーボーとチーズなんか買ったりシて、
あの人を待っている。
あの人は某有名な企業の所長さんデ、
俺はと言うと歌舞伎町界隈にあるキャバレーの、
片言の日本語を話して客引きをしつつ用心棒モドキをしているハンパモン。
出逢いの切っ掛けは些細だったけド、何故か恋に堕ちるのはあっと言う間だっタ。
本来なラ、あの人には普通に奥さんがいテ……。
でも、何故か惹かれあったんダ…。
「じゃ、また来週ネ」
俺は、部屋からあの人を送り出す。
俺の住む、場末にある2DKとは名ばかりのボロアパートは、
あの人は似合わなイ。
だけど、週末にはいつもこうして来てくれタ。
何もない、ただ一緒に居るだケの僅かなひととき。
それが、今の俺には至福の時だっタ。
日曜日から金曜日まではテーラードのスーツを着テ、
シルバーのマイバッハの後部座席に座り、
忙しく職場と流行の高層マンションのペントハウスを行き来シ、
仲睦まじい奥さんと2人で生活しているあの人だけド、こうして金曜の夜だケ。
週末だけは俺に会いに来てくれていタ。
『ちゃんと食事はしているか』
『健全な肉体には健全な魂が宿るのだ。摂生に努めてちゃんと生活なさい』
水商売の俺に言う様な言葉とは思えない事をいつも言イ、
普段来ているスーツを着崩して会いに来てくれるあの人が、俺は好きだっタ。
場末の安普請のボロアパートでモ、あの人がいるそのひとときだけは、
あの手の届かない豪華な高層マンションと同じだけの価値があったんダ−−−−−−。
−−−でも。
あの人が、来なイ。
2週間待っても1ヶ月が過ぎても、あの人が来なかっタ。
テーブルの上のバラの花とボージョレ・ヌーボーの色が褪せて来ているのニ。
あの人は、来なイ。
ふと、視線がテーブルの上にある手紙に移る。
あの人の奥さんからの手紙。
何であの人の奧さんから手紙が来るのか判らず、数日間放置してあったのものダ。
そして何気なく、俺はその手紙を開封スる。
−−短い間でしたがありがとうございました。あの人は先日、突然病に倒れ、息を引き取りました。最期まで貴方の事を心配していました。そして、貴方と会えて幸せだったそうです。難しいかも知れませんが、もうあの人のことは忘れて、新しい思い出作りが出来るよう心からお祈り致しております−−
「何が書いてあるんだろウ…」
丁寧に書かれた優しそうナ、文字。
けど、俺にはその内容が理解できなかっタ。
だって、ほら。
あの人が、部屋に入ってきただろウ?
いつものように、ちょっと暑苦しいハグを俺にして来て。
『…待たせてしまったようだな、なかなか仕事が忙しくてね』
*超弩級のパラレルですね。相手は誰でしょう(笑)
瞬間、脳裏にいろいろなものが走馬燈のように過ぎった。
死ぬ直前に、そう言う体験をすると聞いていたが、本当にそうだとは。
どのみち、このままではもう俺の上に「長い眠り」と云う名の「死」が訪れるのも時間の問題だろう。
この僅かな間の戦いで肋骨はぐずぐすになってしまったし、内臓もかなりヤバい。
ならば。
ならば、残された手段はただひとつ。
流れに身を任せ、受け入れる。
悔しいが…その方法しか今の俺には選択肢が見つからない
そうさ。
こんなところで、
死 ん で た ま る か 。
俺はシン国の皇子、リン・ヤオだ。
皇帝を目指している男なんだからな…。
パラパラパラ…っ
と、マシンガンの弾ける様な軽い音が通路に響き渡る。
「敵はどうやら火器を所持しているので、十分に注意! 接近遭遇したら直ちに射殺。判ったなっ!」
ロイは、執務室にいるいつもメンバーに向かって状況を説明する。
「…どうします? 確認出来ただけでも、軽く50人以上に踏み込まれてますがね」
軽く肩を竦めつつ、ハボックは腰のホルスターからハンドガンを抜くと、セイフティレバーを外す。
「ああ、このまま進ませると都合が悪い。多少の犠牲はやむ終えないが、これ以上私が此処にいると云うのに、好き勝手にだけはさせたくないな…」
苦虫をかみつぶした様な面持ちで、ロイもハボックと同じように銃を抜いた。
「…私は、あまり射撃得意ではないのだが…」
「そんな事言っている場合ではないでしょうに…」
ロイのその物言いに、ハボックは小さく溜息を吐く。
「まあ、まさか反政府ゲリラがこんなにも堂々と本部を襲撃してくるなんて、思ってもみませんでしたからねぇ…」
忌々しげに火の点いていない煙草を銜えたままそいう云うとハボックは、ガチッっとスライドバーをずらす音を立てる。
「今更言っても仕方がない。起きてしまった事を悔やんでも無駄なだけだ…」
「…そりゃそーですけどね。…っと、じゃ、自分は右通路から回り込みます。大佐は左側通路の方を願えますか」
出来るだけゲリラの少なそうな方をロイに任し、ハボックはチラリとロイの方を見やる。
「判った、では…現在ヒトヨンヒトマル…だから…」
ロイは胸元から銀色の懐中時計を取り出し、蓋を開けてを中を覗く。
「10分後だ。10分後、電信室で合流だ。あそこにはフュリーがいるはずだからな…」
「了解しました。では10分後に」
そう言うと同時に、ハボックはその場を走り出すのだった。
一方、実は休息中だったため、談話室で一服していたブレダとフュリーは館内に流れる普段とは異なる雰囲気をすぐに察知し、談話室から外の様子を窺っていた。
そして状況をいち早く判断し、誰に言われるでもなく執務室の方に向かったのだ。
「こう状況が判らないと対処しようがないが…」
「ですね…。問題は…何人ゲリラが此処に乗り込んで来ているか…ですけど…」
ふたりは少ない情報から割り出した内容を彼等なりの方法で分析し、結論を出す。
「…少佐の懸念は的中したが…こういう展開だとは…流石に思いもよらなかったな」
最近活発化していた反政府ゲリラの行動をアームストロング少佐が、実は逐一連絡してくれていたのだ。
「ですね。けど…どう考えても、内通者がいるとしか考えられませんよ…この動きは」
周囲を警戒しながら二人は走る。
目指すは、自分達の護るべき人物のいる部屋。
と、その時だった。
「…フュリー、ストップ」
ブレダが右手で背後から来たフュリーを制する。
「…何人です?」
ブレダのその言葉に、そう問いかけると温厚そうなフュリーの顔が険しいものになる。
「気配だけで言うと…7人程度…って処…か」
そう切り返したブレダの表情には、フュリーとは反対のものが浮かび始めていた。
「了解。じゃ、片付けましょうか…ね」
「…ああ。そうだな。しかし、まさかこんな形でおれたちの腕が役立つとは思いもよらなかったな」
「…ですねぇ」
口元に笑みを湛えつつブレダは腰と、制服の下、脇に隠す様に携帯していた脇銃を抜き、両手でそれ等を構える。
腰のホルスターにあるのは軍の制式のオートタイプのハンドガンだったが、脇に隠してあった銃は個人的に所有しているものらしく、制式のハンドガンより多少口径が大きめだ。
一方フュリーの方はと言うと、軽く眼鏡をかけ直すとやはりブレダと同じように脇に隠してある軍の制式ハンドガンと異なる、38口径の小型のリボルバーを抜き、小さく息を吐き出して腰を落とし構える。
その表情は、普段のフュリーからはとても考えられないほど冷めたものであり、まるで感情が欠落したかのように感じられた。
タンッ タンッ タンッ
ブレダのハンドガンが火を吹く。
と、同時に確実に「敵」と見なした相手を屠っていた。
ただ、制式ハンドガンは一撃で致命傷を与えられるだけの威力に乏しいため、頭部を狙わなければ意味のない攻撃になってしまう。
それをふまえた上でブレダは確実な射撃で、相手の頭部を狙っていた。
口角を吊り上げ、乾いた薄い口唇を赤い舌がチラリと舐める姿は、獣が獲物を狙っている時の様だ。
反対にフュリーはと言うと所持している銃の構造上、相手を確実に倒す為に、体術を巧みに操り相手を拘束してから、一発で仕留めていた。
そうしてものの5分程度で、そこにいた「敵」の排除をふたりは行ってしまった。
「…フュリー、血が付いてるぞ」
フュリーの方法だと、背後から体術で「敵」の頸部を腕で締め上げ、後頭部から銃で撃ち抜くと言う行動な為、ブレダと比べ自然と衣服等に返り血を浴びる事が多い。
「あ。済みません…ありがとうございます」
頬に付着した先ほど排除した「敵」の血を、フュリーは事も無げにそう言い放つと、軽く手の甲で拭い取る。
2人の表情はまるで正反対だった。
パラララララララ…っ
遠くの方からマシンガンの音が響いてくる。
ハボックとロイが目的地に辿り着いた様だ。
「…向こうで銃撃戦をしているようだ…急ごう。大佐は射撃が苦手らしいから、少尉の脚を引っ張っているかもしれない」
シリンダーから空になった薬莢を捨て、ベルトの内側から予備の弾丸の入ったマガジンポーチを取り出しながらブレダは呟く様に言った。
「肯定です。早く行かないと…」
肯定と言う言葉で返事をしつつ手早く作業を終えたフュリーはハンマーを起こし、いつでも撃てる様にする。
ブレダの方はと言うと、カートリッジに十分弾丸が入っているのが判ってはいたが、何が起きるか予測不可能な状態を想定して、マガジンパックから呼びのカートリッジを取り出し詰め替えていた。
「じゃ、行きますか」
「はい…」
ブレダのその言葉に、フュリーは軽く返事をする。
そしてふたりは激しい銃撃戦が行われている執務室の方へと走り出していった。
真っ白な 墓標
空っぽの 棺桶
弔うための 儀式
其処に お前は いないのに
灰色の 鉛色の空
空から降り続く 雨
雨は嫌いだと言うと
止まない雨はないと言った お前
帰らない 昨日
二度と元に戻らない 今日
明けない夜は 無いのに
血に染まった 此の手で
この手で 友を
また。
■無表情
その微笑みは作られた仮面。
誰も、それに対して不信感を抱かなかったのか。
その仮面の下で、お前は何を思い、何を考え生きてきたのか。
いつ、お前はその仮面を覚えた?
いつ、お前は本当の表情を捨てた?
お前の本当の笑顔を見たい。
お前の本心を知りたい。
でも、お前はそんな俺に対してただ微笑むだけ。
頑なに、まるで心を閉ざすように微笑みの仮面で総てを拒絶する。
表情のない、微笑みの仮面で。
■自覚のない笑顔
作り笑いをし続けた結果、笑顔と言う名の仮面が顔に張り付く。
悲しみも、怒りさえも総て微笑みの仮面で隠し続け、
気付けば心から笑えない、歪で哀れな仮面人形が生まれていた。
判っている。
不自然なのだと。
でも、気付けば笑っているのだ。
心は冷め切り、感情が動いていないのにも関わらず…
■嘘吐き
「大丈夫」なんて言葉で騙されない。
お前はいつもそう言って笑うばかりで、
独りきりの夜、切ないほどの嗚咽が心の中で響くのを俺は忘れない。
俺もいるから。
俺がいるから。
思い出して欲しい。
たとえ、俺がお前の身体を奪っていようと、
お前は俺だし、俺はお前なんだ。
心まで一緒になろうだなんて、無茶なことは言わない。
けれど剥き出しの疵だらけの魂を放っておくなんてこと、出来るわけがない。
お前が俺に手を差し伸べてくれたように。
だから。
俺を拒絶する様に手を振り払わないでくれ。
嘘で塗り固めて、自分を奮い立たせて、虚勢を張るようなことはしないでくれ。
■どちらが本物か解らない
鏡に映った赫い瞳
下ろした前髪から見え隠れする鳶色の瞳
指でなぞれば、冷たいそれは
その時だけの逢瀬の口接け
鏡に映る琥珀の肌に
滑り落ちるは、苦痛に歪んだ涙
冷たい鏡に口唇を添え、その涙をそっと受け止める
鏡に映った姿が本物なのか、
それとも此処に在るのが本物なのか。
もうどちらでも構わない。
今、此処に在るのが本当で、総てなのだから。
閉じられた瞼に口接け、互いの存在を静かに確かめる。
鏡越しの、冷たい儀式。
■『俺』が外してあげるよ
さあ、時間だ。
解放してやるよ。
もう、終わりにしよう。
ゆびのかず