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黒兄貴シリーズ-還る場所などない-(螺旋王×カミナ)

「自由が欲しかったんだと…さ」



3人目の俺はそう言って、鏡を見つめる。
俺は、その言葉に何処か羨ましいという感情が芽生えつつ、それでいて胸が痛くなった。
それは、決して俺達が抱いてはならない感情だったからかもしれない。

2人目の俺は、もうここにはいない。
そういう感情を抱いたということで断罪され、処分された。

「自由って、いったい何なんだろうな。お前が抱いた自由への憧れは、ニセモノの感情かもしれねえだろ。自由だなんて言葉に踊らされて…処分されるだなんて ほんとバカみたいじゃねえか。俺達の存在理由を忘れやがって…」

2人目が処分されると同時に、俺は目覚めた。

「もし疑問を抱いたり、思ったりしても、言葉にしちゃいけねえよ…2人目…」

本来なら、そういう記憶の移植はされず魂だけ新たな器に入れ替えて起こされるのが妥当かと思われるんだが、螺旋王は残酷な心の持ち主で、過去の記憶も同時に移植してしまうのだ。
それは、単なる魂の上書きなのでないのだと、これからも延々と魂へ服従という精神を刻み付けるための行為なのだろう。
1人目の記憶は出撃後の記憶が削除されており、それ以降の記憶がなく、それゆえ戦闘で死亡した時の記憶はない。ただ、1人目が誰に想いを抱いていたのかは、僅かに記憶している。

しかし、2人目は違う。

1人目が誰かに抱いていただろう感情に振り回され、それの想いに溺れ、そしてそれを手に入れたくて愚かにも主である螺旋王に「自由が欲しい」などと莫迦なことを抜かした為に、最悪な形で処分された。
螺旋王は、1人目の抱いていた感情も知っていたんだろう。
だから、3人目の俺が二度とそんな感情を抱いたりしないような形で、2人目を…。


思わず俺は自分の両腕を掻き抱き、怖気に恐怖し震える。
「自由が欲しい」という言葉を吐いただけで、王は哀れなものを見るような視線で俺を見たのち、狂気に震えた哄笑をあげたかと思うと激しい勢いで組み伏せ、言葉を発する暇すら与えられないほど殴打し続け、そのまま意識を失いかけた状態のところで、今まで以上の行為で俺を犯し…

そのままの状態で失敗作の獣人を廃棄する廃棄場へと打ち捨てられた。
当然ながら、そういう状況で廃棄された場合、辿る道はたったひとつだ。
死臭の充満する光のない隔離された小さな世界に打ち捨てられた、素手では力など獣人に適うはずもない人間の末路など…。

そのときの記憶が、今の俺にはある。
いびつに歪んだ黒い獣人の群れが、逃げる俺を襲う。
犯され、逃げて。
そして掴まりまた犯される。
そしてその行為が何度か繰り返され、身体中傷だらけになり、逃げることも動く事も出来なくなっても執拗に犯され続け、蛆が湧き腐敗が始まって死ぬ瞬間まで身体は黒い獣人達に犯され続けていた。
それを思い出すだけで激しい吐き気と、身体を貫く怖気に逃げ出したくなるが、その感情で俺を拘束しているんだろう。螺旋王は。


「そうだ。疑問は抱くな。俺はただ…此処にいて…王の言うまま生き、王の言うままに死ねばいいんだ」


鏡に映った自分の顔をじっと見詰める。
俺にはオリジナルの記憶は、ない。
そして何故、螺旋王がこの顔…姿にこだわっているかなども知らない。



「還る場所なんか…ねえんだからな…今の俺には。 俺が生きてける場所は、此処しか…ねえ…」



ギリと、鏡に映った自分の顔に爪を立てる。
青い髪、赤い瞳、藍色の刺青。

決して本来名付けられたはずの名前を、もう二度と呼ばれることはない。
呼ばれたとしてもそれは、自分ではなくオリジナルのものなのだ。
自分には名付けられた名前は ない。


「……」




そして言葉のない感情を飲み込むと黒衣で身を包み、感情を殺した仮面に表情を変え、黒いマントを纏い部屋を出て行った。








後にした部屋には、血のついた鏡の欠片が床に散らばっていた。
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哭(シモカミ)

信じられないほどのカミナの血が、グレンのコクピット内を塗らしていた。
たったひとりの人間の身体の中にカミナの身体の中に、こんなにも大量の血が流れているだと言う事を思い知らされた日でもあった。





「カミナさんは シモンさんのラガンとグレンが合体した時には…既に…亡くなられていたんです…」

目を真っ赤に腫らしたロシウは、横たわるカミナの傍に蹲ったまま微動だにしないシモンに向けて、ポツリと呟く。
敵のガンメンからの集中攻撃を受けたのち、リーロンの操る機械から無情にも映し出された、カミナの生体反応の消失の瞬間。ロシウは、それを目の当たりにしたのだ。
あの瞬間、総ての音がかき消えたかの様に思えた。
強引な持論を目上の人間に対しても不遜な態度でぶつけ、揺るぎのない自信に満ちた意志の強い眼でしっかりと前を見詰める姿は、心底凄いと思っていたロシウだったが、その瞬間、言葉を失い漸く見出せた目標のひとつが呆気なく瓦解してしまった事に愕然となっていた。


「…カミナは、カミナのライフゲージは…尽きてるままだわ… なのに… モニターが壊れちゃったのかしら… 生きてるのかしら。死んでないのかしら、カミナは…ッ」

その後、ラガンと合体し、奇跡を起こすような勢いで敵を撃退して行く様を見詰めながらリーロンは、それでもモニターとそのグレンラガンを交互に眺め、震える口唇で混乱した様に呟いていた。

「グレンラガンは動いています。 ですから…きっとカミナさんは 生きているんだと思います。 だって…ッ あんなに凄い技を繰り出して…」

奇跡を見ているかの様に、熱の篭もった口調でロシウはリーロンの言葉にそう返した。





だが奇跡は、所詮奇跡でしかなく????。





止まない雨の中、大人達がカミナの亡骸をグレンから運び出し、全身を塗らす血を丁寧に拭き取り、ぱっくりと開き、剥き出しになった白い骨と、破裂して形を失った心臓が見えない様に胸へ包帯を巻き付け、地面へ敷いた深紅のマントの上にカミナを横たわらせる。
総ての血が出尽くして仕舞っているせいか、カミナの身体は色を失ったように青冷めており、藍に染められていた刺青が黒く沈んだ色へと変色していた。
そして太陽の赤を映した様に、綺麗な赤い色をした瞳はもう二度とみんなへ、シモンへ向けられる事はない。

「……っ」

声無く泣き続けるヨーコの肩を、慰める様にしてリーロンはそっと抱き締め、その頭を抱える様にして自らの胸へと誘う。
子供達は、カミナが死んだことに気付かず『どうして眠ったままなの』と、大人達を困らせていた。
そしてロシウは、蹲るシモンの背中をじっと見詰めていた。






ねえ おれを見て?

おれだけを見て?



ねえ どうして 目を開いてくれないの?



おれはここにいるよ?




ねえ…。



兄貴…。




涙も枯れ果て虚ろな瞳のシモンは蹲っていた身体を僅かに起こし、既に体温を失い冷たくなったカミナの身体にそっと手を伸ばす。
無骨ながら、優しく暖かかった腕は、もうシモンを抱き締めて来ない。

「…あ ぁあぁぁああぁああ……ッ」

黒々とした何かとてつもない重い何かがシモンの胸を突き、それがとても苦しく、そして押し潰されそうなほどに大きく、思わず自らの両腕を抱き締め、シモンは慟哭した。

白い風(シモカミ)

地上へ来てからもう何日経ったんだろう。
兄貴は、村にいた時と少しも変わらないでいる事を装っていた。
傍若無人で天衣無縫、荒唐無稽な物言いは、あの地下での生活の頃と少しも変わっていない。


…けど。

けど、違うんだ。


それは、おれにしか判らない、兄貴の変化。
それは、おれしか知らない、兄貴の横顔。


ヨーコにも、リーロンにも、それは判りはしない、兄貴の横顔。

この青い空を仰ぎ、兄貴がなにを考えているかは、流石におれには判らない。

地上に出てきて直ぐに見つけた、兄貴の父さんの白い骨が、兄貴を変えてしまったんだろうか。
地上の赤く乾いた大地の風に吹かれて、兄貴は何かを見つけたんだろうか。



何処か遠い表情で、青い空を仰ぎ見ている兄貴の腕を掴もうと一瞬だけ伸ばした手を、おれは躊躇い引っ込める。
決して言葉はないのだけれど、空を仰いでいる時の兄貴は、自分以外の総てのモノを拒絶しているようで、触れることが叶わなかったんだ。



ふと、兄貴がこちらを見た。
乾いた白い風が、おれと兄貴の間を吹き抜ける。


『どうした? シモン 俺の顔になんかついてるか?』


太陽の陽射しを背に受けて、兄貴はおれの方を向いてにっこり笑っているように思えたけど、影がそれを隠してた。


「ううん、なにもついてないよ。」


兄貴は、おれの返事に何も応えず静かに口元だけで笑みを造り、軽くおれの頭を撫でるように叩くと、そのまま横を通り過ぎて行く。






おれは、兄貴を護りたい。

俺は、兄貴が何を目指しているのか判らないし、敢えて聞く気もないけれど、俺は兄貴を助けて行きたい。
烏滸がましいと、生意気だと失笑されるかもしれないけれど。


こうして、兄貴の頬を優しく撫でる白い風のように、俺はずっと兄貴の側にいたい。
兄貴とずっと一緒にいたい。

キャプテン・シモンとチビカミナシリーズ -HUSH-A-BY-

すやすやと眠るカミナの髪を優しく撫でると、シモンは過去へと想いを馳せる。
ここにいる小さなカミナ以外、どの次元のカミナも総て死すべき運命から逃れられない。

しかし、この小さなカミナもいつかは此処から旅立つ意志を示すだろう。
カミナは、そういう人間なのだ。

シモンは痛いほど判っていた。カミナが閉ざされた空間にいつまでも留まっていられないという事を。
それが果たして明日なのか、5年後なのか、はたまた20年後なのかは判らない。
だが、いつかは自分の前から旅立つことだけはわかっていた。


その行為が喩え「死」を迎える事となろうと、カミナはいつまでも一所には留まってはいられないのだ。


その時、シモンはこの小さなカミナを笑って送り出すことが出来るだろうか。
シモンは小さく呻き、口唇を噛み締める。
一度手に入れてしまったものを、手放すことはそんなに容易いことではない。
それが、確実に二度と手に入らないものだと判っていればなおさらの事だ。

その瞬間を、シモンは何度も何度も心の中で描くが、答えは出ない。
言葉の鎖で括りつけて、部屋に閉じ込めておけばそれでいいのか。
しかしそんなことをしてしまえば、大鳥のように自由に羽ばたくカミナの魂はそこで砕かれてしまうだろう。そして、シモンの愛するカミナは永遠に失われてしまうのだ。


「…苦しいよ、兄貴。おれは…どうすれば…」


小さなカミナの髪を撫で指で梳る手が止まり、ゆるゆるとちょっとでも力を入れて掴めば折れてしまいそうな細い首筋へと視線を移しそして手が伸びる。

「……ん」

違和感を感じたのかカミナは小さく身じろぎ、小さく寝言のような声を発すると寝返りを打った。

「あ…っ あぁあぁあ……ッ」

シモンはその瞬間、自分が何を仕出かそうとしたかに気付き、その自らの行為に恐怖し慌ててカミナから手を離すと、ベッドの脇に頽れ顔を両手で覆い呼吸するのも苦痛なような喘ぎを漏らした。

キャプテン・シモンとチビカミナシリーズ -ピュグマリオン-

「お お き な ? ♪  お ふ ね の せ ん ち ょ う さ ぁ ? ん の お な ま え は ぁ ? ♪ そ の 名 も か っ こ い い キ ャ プ テ ン ・  シ ぃ モ ?ン ♪ 」

少しどころか結構派手に音程がズレた声で歌いながら、カミナは大きな荷物を両手に抱えて廊下を歩いていた。シモンとは色違いのマントに、矢張り色違いのパンツとブーツを履き、一丁前の姿で廊下を歩いている姿は、はっきり言って微笑ましい。
何しろ、自分よりも大きな荷物を抱えて歩いているのだ。
カミナが歩いているというより、荷物が歩いているようにしか見えない。
更に、音程がズレているだけでなく、即興で作ったわけのわからない歌が聞こえてくるのだ。
そんなカミナをやり過ごすクルー達は、肩を震わせて笑い声を殺すしかなかった。

「リーロンさぁーん いわれたハコ、もって来たー♪」

サブブリッジのハッチの前まで来ると、持っていた荷物を床に置き、インカムがセットしてあるコンソールパネルに背伸びしてスイッチを押し、フックに引っかかっているインカムを手に取ってそう告げる。

『お使いありがとう。今開けるわ』

インカムから聞こえてきた声に、カミナはにっこり笑って再びフックにインカムを引っ掛け、床に置いた荷物を持ち上げる。すると同時にサブブリッジのハッチが音を立てて開いた。

「この中に、いわれたものはいってるって、そうこのかんりにんさんいわれたよ」

ハッチが開くとカミナはとことこと中へと入って行き、忙しそうに作業をしているリーロンの横へその荷物を置いて、箱の中に入れてあった書類を取り出してリーロンに渡す。

「サインくださーい」

リーロンは渡された書類にサインを添えるとカミナへその書類を返し、

「カミナはえらいわね。覚えるのが早くて、嬉しいわ」

そう言ってカミナの頭を撫でる。
するとカミナは、リーロンに褒めらたことに対して本当に嬉しそうに笑うと肩を竦めて、

「だっておれ、早くシモンさんのやくに立つようになりたいから。早くおおきくなって、ひとりべやにうつらないと。ずっとシモンさんのおへやにはいられないからね。このふねのせんちょうさんなんだから、シモンさんは。せんちょうさんのおへやにおれがいたら、ヘンでしょ」

小首を傾げてそう言ったカミナに、一瞬だけリーロンの口元が引き攣るが、直ぐ何事もなかったようにきゅっとぽってりとしたふくよかな口元を引き締めて

「そうね。早く大きくなってシモンの片腕になりなさいな? シモン喜ぶわよ。 でも、ちゃんと勉強もしないといけないわよ?」

そうカミナに言って微笑む。

「うん。いっぱいべんきょうして、あたま良くなってシモンさんのためにはたらくんだ。おれ」

その眩しいカミナの笑顔に、リーロンは目を細め慈しむ様な仕草で何度もカミナの頭を撫でた。

「じゃ、まだおれしごとあるから。また来るね」

余りに優しく撫でられて、流石に居心地が悪くなったのか、それとも照れ隠しなのか、ほんのりと頬を染めたカミナはその場で両手をばたばたと大きく動かし、リーロンから離れると渡された書類を抱えてぺこりと頭を下げた。
そんなカミナの可愛らしい仕草に、リーロンは小さく吹き出すと

「頑張ってらっしゃい。お仕事」

そう言って軽く手をひらひらと扇ぎ、慌てたようにサブブリッジから出てゆくカミナを見送った。

「…大きくなる… か…。 そうよ…ね…言える訳ないわよね…あんな小さな子に…」

廊下を走って行くカミナの小さな背中を見送りつつ、リーロンはぽつりと呟く。



そう。


この艦から降りない限り、時は永遠に止まったままなのだと。
この神に見放された限られた空間に存在している限り、自分達は時の流れから切り離された永劫の時間の旅人なのだ。


それを、小さなカミナに告げられるはずもない。
告げたとしても、まだ理解など出来ないだろう。


「でも、いつかは言わないといけないのよね…シモン、あなたは真実をカミナに告げられて?」

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