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ある世界の終焉とその先に(ゲルト×ヘルマン)

今日は風が強かった。
ヘルマンはふと、自分が小高い丘の上に立っているのに気付く。
風は轟々と吹くが空は透き通る様に蒼く、そして高かった。

「ここは、何処なんだろう」

自分がどうしてここにいるのか、ヘルマンは判らない。
ただ確かに云えることは、自分はもう戻ることのない旅へと旅立ったことだった。
そして此処が、その旅路の果てではないということは感じていた。


これから先は何処へと行くのか、何処へ向かうのか、ヘルマン自身わかっていなかった。
確かに云えることは、遥か遠く果てしのない旅だったのだけれど。

激しい風が、ヘルマンの太陽の陽射しを浴びて少し痛んだ短く赤い髪を容赦なく玩ぶ。
眼が痛くなるような蒼い空を見上げていたヘルマンは、
玩ばれる髪を片手で押さえつつ小高い丘から見渡せる世界を視界に移す。

そこには、更に青く果てしない海原があった。

遠く水平線はなだらかに、風に煽られた波飛沫がところどころに白く押し寄せる。
ヘルマンの住んでいた街にはない風景なのにどこか懐かしいもので。





ここが世界の果てだった。
ヘルマンが生きてきた世界は、此処で終りだったのだ。


「…ああ」


広く果てしなく、そして非情なまでに美しかった世界。
けれどもう、ヘルマンの世界は此処から先はない。

怒りも、悲しみも、絶望も、希望も、この先にはない。

あるのは、ただ…。



「オレは、もう」


そして悟った。



肩を背後から軽く叩かれる。

「…」

振り返ればそこに、ゲルトがいた。

「行こうか。新しい世界に。此処ではない何処かの世界へ」

ゲルトはそういうと、優しく微笑む。
あの時、あの瞬間と何ひとつ変わらぬ姿で、ゲルトはヘルマンに向かって微笑んできた。
そしてゲルトの顔を見た途端、ヘルマンは泣き出したくなった。
そんな彼を、ゲルトは何も言わず微笑んだまま抱き締める。



「ああ。一緒に走ろう。いつまでも。世界の果てまで」


悲しいまでに優しいゲルトの抱擁に応える様に、ヘルマンはそう言って両腕をゲルトの背へ廻す。






ひとつの世界が、ここで、終末を迎えた。

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