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チャンドラ(種)

オーブと言う国が今日、この地上から消えた。
名前も、そしてかたちさえも。
戦禍にまかれ、散った国。
その瞬間を、おれは見ていないけれど、脳裏に過ぎる僅かなデ・ジャヴ。
ああ、そうか。
おれの生まれた国。
おれの育った国と一緒なんだ。
殺生を禁忌とした独自の宗教を教義とし、その教えに則った生活をしていたおれの国は、国家統合の際、連合に与しない反逆国と言う理由だけで、この地上から、そして地図から永遠に消えてしまっていたんだっけ。
交換留学生としてシンガポールに留学していた時に、起こった出来事。
シャトルでほんの1時間程度の距離だったのに。
事が起こる寸前まで、父も母も、おれには連絡一つくれなかった。
事実を知ったのは大学の食堂で見ていた、テレビのニュースで。
決して豊かとは言い難い国だったけれど、独自のアニミズムに則り、穏やかな生活を良しとした、優しくて暖かくて、美しい国だった。
生い茂る濃い香りの緑。
極彩色に彩られた、鮮やかな動物や花々。
アジアの一角にある、本当に小さな島国だったのに。
結局それから、おれはシンガポールと言う国に守られるかたちで、それまでの身分と国籍を捨て去り、今までシンガポール国民として生きてきた。
名前は流石に捨てられなかったけれど…。

そして。

当時の友人達から激しく反対されつつも、反逆の意志がないことを示すために、おれは敢えて連合の軍人になる事を選択し、今こうしてここにいる。
結局、連合から離反しているんだから、笑ってしまうよな。
ふと、メガネが曇っているのに気が付いた。
何でだろう…と思いメガネを外した時、その時初めて気が付いた。
パタパタとコンソールに落ちる滴。


ああ、おれは泣いていたんだ。
父や母や、国を失った時ですら、泣いた記憶がなかったのだけれど…。


ずっと胸の奥底に封印していた自分の本当の思いが、オーブの崩壊を機に身を擡げて来たんだろうか。



これ以上、国や愛するひとを失う人達が増えたりしないように。
こんな思いをするのは、自分やオーブの人達だけで充分だから。

おれは、心の中に住まう、故国の神々に祈った。
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