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聖柩に眠る(大人シモン×カミナ)

薄暗い艦長室で、生命維持ポッドに眠る様に横たわっているのは、あの日、生命の灯火が呆気なく奪われてしまったカミナだった。
そしてそのカミナの眠る生命維持ポッドからは数え切れないほどの配線コードがのたうつ蛇の様に巨大なコンピューターに向かって繋がっていた。
戦闘を終え艦橋から戻ってきたシモンは、纏っていたマントをハンガーへ掛け、生命維持ポッドの前迄来ると、流れる様な手付きで巨大なコンピューターに接続されているキイボードを叩いて行く。
その表情は子供の頃の名残など一切ない、不敵な笑みを口元に張り付けた精悍な若者のものだった。

「兄貴、もういいよ。 起きて?」

そしてパスワード要求画面がモニターに現れると、自分達にとって大切な言葉を打ち込み、エンターキーを押した。



“んーー おはよう。シモン”

空気の漏れる音と、鍵の外れる音がしたかと思うと、生命維持ポッドのキャノピーがゆっくりと開き、眠っていたカミナが中からゆっくりと起きあがり、僅かに電子音混じりの間の抜けた声でそう伸びをしながら生命維持ポッドの中から出て来たのだった。


あの日、カミナは生命を失った。
それは誰にも曲げられない事実であり、そこにいた総ての仲間達を絶望の淵に叩き落としたのだ。
死んでしまった事を認めようとしない者達と、素直に受け入れ埋葬をしようとする者達の間で、リーロンだけが必死に、今自分が出来るだろう事を考え、ダイザンガン内なあった用途不明の謎の機械を利用して、冷凍睡眠装置を急ごしらえで造り『まずは埋葬せずに、眠っていてもらいましょう』と、提案をして来たのだ。
蘇生させる方法が見付かるまでの間、その冷凍睡眠装置でカミナの時を止める。
それは、リーロンとしては本当は一番したくはなかった行為だった。
リーロンの本音としては本当は、カミナをこのままずっと穏やかに眠らせて起きたかったのだが、二分した意見が延々と続けば、グレン団の士気にも関わってしまう為、会えてリーロンは外道と罵られようと、その方法を選択したのだ。
そして、ダイザンガンの機関室側にある巨大な保管庫に、その機械を移動させ、リーロンは何度も何度もカミナに謝りつつ涙をこぼし冷凍睡眠装置の中へと横たわらせた。
いつか平和な日々が訪れ、大きくなったシモンが、カミナを起こせる日が来る日を祈りながら。




しかしその後、再びダイザンガンは獣人達の手によって奪取され、その冷凍睡眠装置で時を止めたまま眠るカミナも同時に奪われる事となってしまったのだ。






「体調はどうかな、コンピューターとの接続具合とか」

シモンはカミナの顔を見ると、それまでの不敵な笑みを零していた口元が綻び、ギラついていた瞳が柔和なものへと変化する。

“大丈夫だ。 いつも通り気持ちよく目覚められた”

裸足でペタペタと歩く背後には、数本のコードが首筋から下がっており、そのコードは生命維持ポッドへと繋がっていた。

「ならいいけど。今日の戦闘は、結構長かったからね。兄貴に負担かかってないか心配だったよ」

ふわりと前髪を軽く手で掻き分け、それまでの険しい表情から一転、子供の頃の様な晴れやかな笑顔でカミナを見詰めるシモンは、サイドボードからブランデーグラスとボトルを取りだし、テーブルの上へ置いてロッキングチェアへと腰を掛ける。
いっぽうカミナは、接続されているコードのせいで行動範囲が決められているのか、普段シモンが眠るベッドへと腰をどっかりと下ろし、

“バカにすんじゃねえよ。俺を誰だと思ってんだ。処理能力は以前より、リーロンのおかげで50倍にまで跳ね上がったんだ。メインキャノンの砲撃角度調整だってめちゃくちゃ早かっただろ”

足を組んで、顎肘を突きニヤリと不敵な笑みを漏らす。
そして、右手の指で宙に何か文字を書くように動かすと、そこには先ほどの戦闘状況の結果が映し出され、敵戦艦の撃沈数と、この艦の被弾状態がグラフになって現れた。

“ほら、右舷45度からの攻撃があった時にな、実は直ぐ側まで敵の光学迷彩仕様の小型戦闘艦の接近があったんだわ。けど、それにブリッジの連中ギリギリまで気付いてなかっただろ。俺がアラーム鳴らさなきゃ、この艦風穴空いてたぜ”

チカチカと薄緑色と黄色、そして赤色のライトがそのグラフを照らし、カミナの言葉通りのデータが映し出され、そのデータを覗き込もうと、一口だけ口をつけたブランデーをテーブルへ置いてカミナの傍までやって来て、シモンは思わずぎょっとする。

“もっと副官を信用して、お前さんはドンと構えて指示してりゃいいんだよ。後は俺がフォローしてやるからさ”

その示されたデータのグラフで、この艦が今回の戦闘でどれだけ危機に晒されていたかが良く判ったのだ。
実際、艦橋を除いたいくつかのブロックがレッドシグナルを点滅させていた。

「兄貴の嘘つき。これの何処が大丈夫なんだよっ!」

点滅している箇所を指差し、シモンは思わず怒鳴る。
艦体が傷付けば、この艦の指揮系統から情報処理、装備仕様に関する総てを演算処理し管理しているメインコンピューターに負担が掛かるのだ。そして、そのメインコンピューターのアナライジング端末がカミナの身体であるのだから、その身体へと負荷は相当なものの筈だった。

“過負荷なんか掛かるような処理はしてねえよ。脳を焼き切れさせたくねえもん。流石に俺だって、自分の置かれてる立場くらい把握してんだから、心配すんなって”

カミナは、あの頃と寸分たがわない容姿のまま、そして口調のままそう言ってシモンの肩を軽くポンポンと叩が、その手はひんやりと冷たく生きているものの体温を一切感じないものだった。


あの日ダイザンガンを奪われた後、冷凍睡眠装置内で眠るカミナの存在に気付いた獣人の科学者達は、ダイザンガンの機能を更に向上させる為に、ニューロコンピュータ端末としてカミナの身体と頭脳を利用し、死者を冒涜する行為を行い、カミナの身体を改造してしまったのだった。
その為、カミナの身体は人としての機能を重視するのではなく、コンピューターと一部としての機能を特化した肉体へと変えられてしまい、普段は生命維持ポッドで20時間近く睡眠を必要とする人としては不自然なものになってしまった。

「兄貴…」

ひやりと冷たいカミナの身体を抱き締め、シモンはぽつりと呟く。
人とは言えない身体になってしまったカミナではあったが、シモンにとってカミナはいつまでたっても『兄貴』であり、大切な人なのだ。

“なんだ、シモン…”

抱き付いて来るシモンの頭をそっと撫でながら、電子音混ざりの声が静かにシモンを宥める。
その声に、昔のような熱さはない。昔のような熱さが失われた訳ではないのだが、システムの関係上、感情が余りに高まるとコンピューターの端末としての機能が阻害されてしまうせいで、人として本来あるべき感情の一部を削除されてしまっていた。
それはある意味、本来のカミナという人物の性質を永遠に奪われてしまったに等しかった。
だが、それでも人であった頃の記憶がそうさせるのか、そのコンピューターとしての機能を軽視し、暴走することも多く、矢張りそれはコンピューターとしてはあまり良い方向には働かず、本体に負担をかけてしまう結果となることも多かった。

「…あんまり兄貴が無理すると、俺心配で。幾ら、今の兄貴は昔と違うからって、それでも…」

しかし、今のカミナは死なない。
データさえバックアップされていれば、何度でも元に戻るのだ。コンピュータ端末の一部として、事故修復機能から修繕されるために。

“バカだなあ、シモンは。俺が大丈夫だって言ってんだから、大丈夫なんだよ”

ニヤと笑いながら、カミナは体温を感じない両腕で、そういいながらシモンの頭を掻き抱く。

「兄貴…」

そんな自分の頭を掻き抱いてくるカミナを、シモンはゆっくりとそのままベッドへと押し倒す。
はじめは、シモンの甘えから来た行為だったが、次第にそれは熱を帯びたものへと変わってゆき、気づけば二人の関係はより深いものへと進展していた。
信じられない行為ではない。
いつしか互いが求め合い、関係を結んでいたのだから。

ただひとつ言える事は、その行為自体は今の身体のカミナには負担でしかないのだ。
だがそれを、カミナはシモンへは告げなかった。




2人の間に阻むものは何もなく、ただ流れるは熱い吐息と大切なひとと触れあえていると言う高揚感に満ち、その触れ合う肌と肌、そして交わす口唇の熱さをカミナは確かめ、その熱に浮かされる様に互いの口唇を貪りあい続けていた。
歯列を割り侵入させた舌で、上顎からゆっくりと舌先で撫でるように愛撫すると、その刺激でカミナの身体が僅かに震え、おずおずと舌を自らの舌をシモンのそれへと絡める。
凍えるように冷たいカミナの身体が、シモンの体温で少しずつ温まり、それが本来の体温かのような錯覚に陥ってしまうほど、互いの肌の触れ合いは密接していた。

“シモン…ッ”

シモンから伝わる熱の熱さに、カミナは小さく喘ぎ身じろぐ。
そのカミナの反応にシモンの胸の高まりは更に激しいものとなり、カミナの首へと腕を絡め更に深く抱き締めた。
互いが互いの首を、頭を掻き抱く形になり、交し合う思いはさらに深いものへと変わってゆく。
そしてそのシモンの手の動きに反応するかの様に、カミナはゆっくりと手をシモンの背へ廻した。
そうする事によって、互いを阻んでいた不自然な距離はなくなり、口接けは更に深く交わされ、湿った音だけが2人の間にあった。

「…ッ」

長い口接けが続き、僅かに苦しそうに喘ぎを漏らすカミナは酸素を求める様に口唇を開くと、シモンもそっと僅かに口唇を離す。そして2人の間に銀糸が引き、それがカミナの顎から首へと伝い落ち、汗に濡れた肌がよりいっそう艶やかな色彩を放つ。

無理をさせられない身体ではあったが、どうしても欲しい時は、こうして身体を重ねあうことで、シモンとカミナは互いの想いを伝え合っていた。

「もう、これ以上は兄貴の身体に負担がかかる」

本当は、もっと抱きしめていたい。
本当は抱きしめて、もっと自分がカミナのことを本当に愛しているのだと伝えたかった。
しかし、それは叶わない「夢」でしかない。
カミナが、このダイザンガンのコンピューターの端末である限り。
シモンの体温が、カミナのコンピューターとしての機能を奪い、カミナの冷たい体が、シモンの体温を奪うのだ。

“済まねえ…な、シモン…もっと、抱きしめてやりたいのに…”

二人はそのままそっと身体を離し、シモンは再びロッキングチェアへ、カミナはベッドから起き上がると生命維持装置に繋がるポッドへと向かう。

「ううん… 俺は、こんな形でも兄貴が生きてここにいるだけでうれしいんだ… だから、気にしないで」

本来なら、もう二度と会えないのだと、抱き締められないと思っていたカミナとこんな形ではあれ、再びこうして一緒にいる事が出来るのだ。これ以上望む方が間違っている。
シモンはそう考えていた。

“シモンは、ヘンな所で生真面目だからな… 俺としてはもっと本心が聞きたいんだけどよ”

シモンの気持ちは十二分なほど判っていたが、それでも言葉で、態度で示して欲しいとカミナは思いつつ、自分を思い遣ってくれているシモンに対して感謝の言葉を続ける。今のカミナには、こんな言葉しかシモンへ伝えることが出来ない。以前ならもっと、態度で示せたのだけれど。

「僅かだけど、こうして要られる時間があるだけ俺は恵まれてるんだと思うから、兄貴には無理して欲しくないんだ」

僅かな時間しか起きていられないカミナのその大半は、普段ニューロコンピューターとしてのメンテナンスに割かれる為、実際こうしてカミナとシモンとして個人的に時間を割けるのは年間を通して数時間もない。
今回も半年以上ぶりに、こうして時間が取れたのだ。
次にこうして会話が出来るのはいつのことだろう。

“強くなった…な… シモン…”

カミナは振り返り、ロッキングチェアに座りブランデーグラスを手にしたシモンへ向けて、優しく嬉しそうに微笑むとそう言って生命維持ポッドの中へと入る。
そして装置内のランプがいくつか点滅すると、キャノピーが閉じ、カミナは静かに目を閉じた。



「強くなんか、なってない よ… 兄貴。 本当は…もっとずっと抱き締めていたいんだ。もっと、兄貴を感じていたいんだよ…ッ」

既に生命維持ポッドの中で、ダイザンガンのニューロコンピューターの役割を果たす為に再びコンピューターに接続され人としての眠りにつく
カミナを見つめ、ギリと口唇を噛み締め手にしたブランデーグラスを握り締めたシモンは血を吐く様な言葉でそう呟いたのだった。
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