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永劫の円環(シモカミ/鬱)

激しい爆音と共に、自分の身体がフワリと持ち上がった感覚にシモンは、一瞬何が起きたのか判断出来なかった。
確か、自分達は獣人達からの攻撃を避け渓谷を抜け、各地に散らばったグレン団が集合する為に作った隠れ里に向かう途中だったはず。
獣人達のテリトリーのど真ん中を突っ切る為に、陽の高いうちの行動は避けて、夕刻から移動しようと言う話しになって…そして…そして…。

「…っ!?」

シモンは記憶を手繰り寄せながら、朦朧とする意識を振り払う為に軽く頭を振り、今自分が置かれている立場を思い出した。
森を抜け、渓谷に入る為の谷に差し掛かった途端。
ふと、何気なく視線を赤い、真っ赤な血の色をした渓谷から崖の方へと視線を移した瞬間、キラリと輝く物に気付き、モニターを拡大しようとした瞬間…。

「…あ……兄…貴…っ!」

信じられない程に呆気なく鉄屑と化してしまった自分のラガンの側に、まるで自分とラガンを庇う様にしてのし掛かっていたグレンの存在に気付く。

「兄貴…?」

シモンは、何度かグレンに向かって呼びかけるが、しかしグレンからの返答は一向になかった。

「…?」

不思議に思ったシモンは、ラガンのモニターをグレンへと接続する。
そして、自分の視界に飛び込んできた画像を見て一瞬言葉を失ったが、ふと、自分の身体を見直した。

「…ああ…なんだ……」

腹部からは内臓が半分零れ掛かっており、更には右足があり得ない方向に捻れ裂けていたのだ。
そう言えばさっきから、何の音も聞こえなければ、確かに血が流れているはずなのに痛みもなかった。
その時点でおかしいと思わなくてはいけなかったのに。シモンは失念していた。

「…でも」

もうどうでもよかった。
今は、ぴくりとも動かないグレンのコクピットの中のカミナの傍に行きたかったのだ。
のろのろと身体を引き攣る様にして、シモンはラガンのコクピットから這いずって外へ出ると、グレンのコクピットのハッチを開き、カミナの側へと近付き、血に染まったカミナの身体を静かに抱き起こす。
触れてみれば、兄貴が既に事切れているのは明らかだった。
自分とラガンを庇ったせいだろう。
コクピットの破壊されている状態から、後頭部や背中も全て破壊されたグレンの期待の破片やグレンを直撃し破裂したロケットのせいで、カミナの背面は悲惨な状態だった。
常人なら目を背け、吐き気と戦わなくてはならない程の状態のカミナの姿だったが、抱き起こし、前を向かせると背面とは異なり綺麗なもので。

「血塗れの手で…触れても…いいよ…ね……だって……開きっぱなしの…眼じゃ……」

シモンは、ぐったりと身動きひとつしない腕の中のカミナに向かって話しかける。
爆風に吹き飛ばされたらしく、サングラスはその辺りには見当たらない。

「おれ…兄貴の赤い眼…好きだったんだけど…な…」

震える指でそっとカミナの瞼を閉じると優しく、壊れ物を抱き締めるかの様な仕草で、シモンはカミナの頭を掻き抱く。

「…くやしいな…もう…兄貴の…その綺麗な赤い眼……見れないの…か……」

彼の周囲にじわじわと血溜まりが生まれてゆく。その量は、決して少なくはない。
カミナが身を挺して守ったシモンも、もうあと僅かの時間しか残されていないようだった。
自分達はいったい、何のためにここにいたのだろう…。

「……。」

シモンはそっと呟いたあと、もう永遠に開くことが無くなったカミナの瞼にそっと口接ける。
周囲の喧噪も、色彩も全て失われつつあった。
冷たくなり出始めた手足が、自分の生命の火が静かに消えつつあるのだとシモンは感じ取っていた。

「…みんな……どうしてるか…な………」

そう言ってシモンは、大きく溜息を吐き、ゆっくりと目を閉じた。





















がばりと起きあがり、冷たい寝汗を酷くかいていることに気付き、手の甲で額の汗だけは拭う。

「…ゆ…め……か」

シモンは自らの震える両手を必死に押さえ、自分の身体を掻き抱く様にしてその震えを押しとどめようとしていた。

「夢でも… こんなのはイヤだ… 何で… どうして…こんな…っ」

唇を噛み締め、膝を抱える様にして言葉を殺す。
隣では、気持ちよさそうに寝ているカミナの姿があり、夢は飽くまでも夢でしかない事を示していたが、今のシモンには、その夢ですら恐怖であった。

「おれが… おれが…護るんだ… 兄貴を…みんなを… あんな結末を迎えない為にも…っ」

チラリと横目でカミナを見遣り、苦悶の表情を浮かべシモンは呟いた。

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