FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

キャプテン・シモンとチビカミナシリーズ -ピュグマリオン-

「お お き な ? ♪  お ふ ね の せ ん ち ょ う さ ぁ ? ん の お な ま え は ぁ ? ♪ そ の 名 も か っ こ い い キ ャ プ テ ン ・  シ ぃ モ ?ン ♪ 」

少しどころか結構派手に音程がズレた声で歌いながら、カミナは大きな荷物を両手に抱えて廊下を歩いていた。シモンとは色違いのマントに、矢張り色違いのパンツとブーツを履き、一丁前の姿で廊下を歩いている姿は、はっきり言って微笑ましい。
何しろ、自分よりも大きな荷物を抱えて歩いているのだ。
カミナが歩いているというより、荷物が歩いているようにしか見えない。
更に、音程がズレているだけでなく、即興で作ったわけのわからない歌が聞こえてくるのだ。
そんなカミナをやり過ごすクルー達は、肩を震わせて笑い声を殺すしかなかった。

「リーロンさぁーん いわれたハコ、もって来たー♪」

サブブリッジのハッチの前まで来ると、持っていた荷物を床に置き、インカムがセットしてあるコンソールパネルに背伸びしてスイッチを押し、フックに引っかかっているインカムを手に取ってそう告げる。

『お使いありがとう。今開けるわ』

インカムから聞こえてきた声に、カミナはにっこり笑って再びフックにインカムを引っ掛け、床に置いた荷物を持ち上げる。すると同時にサブブリッジのハッチが音を立てて開いた。

「この中に、いわれたものはいってるって、そうこのかんりにんさんいわれたよ」

ハッチが開くとカミナはとことこと中へと入って行き、忙しそうに作業をしているリーロンの横へその荷物を置いて、箱の中に入れてあった書類を取り出してリーロンに渡す。

「サインくださーい」

リーロンは渡された書類にサインを添えるとカミナへその書類を返し、

「カミナはえらいわね。覚えるのが早くて、嬉しいわ」

そう言ってカミナの頭を撫でる。
するとカミナは、リーロンに褒めらたことに対して本当に嬉しそうに笑うと肩を竦めて、

「だっておれ、早くシモンさんのやくに立つようになりたいから。早くおおきくなって、ひとりべやにうつらないと。ずっとシモンさんのおへやにはいられないからね。このふねのせんちょうさんなんだから、シモンさんは。せんちょうさんのおへやにおれがいたら、ヘンでしょ」

小首を傾げてそう言ったカミナに、一瞬だけリーロンの口元が引き攣るが、直ぐ何事もなかったようにきゅっとぽってりとしたふくよかな口元を引き締めて

「そうね。早く大きくなってシモンの片腕になりなさいな? シモン喜ぶわよ。 でも、ちゃんと勉強もしないといけないわよ?」

そうカミナに言って微笑む。

「うん。いっぱいべんきょうして、あたま良くなってシモンさんのためにはたらくんだ。おれ」

その眩しいカミナの笑顔に、リーロンは目を細め慈しむ様な仕草で何度もカミナの頭を撫でた。

「じゃ、まだおれしごとあるから。また来るね」

余りに優しく撫でられて、流石に居心地が悪くなったのか、それとも照れ隠しなのか、ほんのりと頬を染めたカミナはその場で両手をばたばたと大きく動かし、リーロンから離れると渡された書類を抱えてぺこりと頭を下げた。
そんなカミナの可愛らしい仕草に、リーロンは小さく吹き出すと

「頑張ってらっしゃい。お仕事」

そう言って軽く手をひらひらと扇ぎ、慌てたようにサブブリッジから出てゆくカミナを見送った。

「…大きくなる… か…。 そうよ…ね…言える訳ないわよね…あんな小さな子に…」

廊下を走って行くカミナの小さな背中を見送りつつ、リーロンはぽつりと呟く。



そう。


この艦から降りない限り、時は永遠に止まったままなのだと。
この神に見放された限られた空間に存在している限り、自分達は時の流れから切り離された永劫の時間の旅人なのだ。


それを、小さなカミナに告げられるはずもない。
告げたとしても、まだ理解など出来ないだろう。


「でも、いつかは言わないといけないのよね…シモン、あなたは真実をカミナに告げられて?」

スポンサーサイト
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。