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白い風(シモカミ)

地上へ来てからもう何日経ったんだろう。
兄貴は、村にいた時と少しも変わらないでいる事を装っていた。
傍若無人で天衣無縫、荒唐無稽な物言いは、あの地下での生活の頃と少しも変わっていない。


…けど。

けど、違うんだ。


それは、おれにしか判らない、兄貴の変化。
それは、おれしか知らない、兄貴の横顔。


ヨーコにも、リーロンにも、それは判りはしない、兄貴の横顔。

この青い空を仰ぎ、兄貴がなにを考えているかは、流石におれには判らない。

地上に出てきて直ぐに見つけた、兄貴の父さんの白い骨が、兄貴を変えてしまったんだろうか。
地上の赤く乾いた大地の風に吹かれて、兄貴は何かを見つけたんだろうか。



何処か遠い表情で、青い空を仰ぎ見ている兄貴の腕を掴もうと一瞬だけ伸ばした手を、おれは躊躇い引っ込める。
決して言葉はないのだけれど、空を仰いでいる時の兄貴は、自分以外の総てのモノを拒絶しているようで、触れることが叶わなかったんだ。



ふと、兄貴がこちらを見た。
乾いた白い風が、おれと兄貴の間を吹き抜ける。


『どうした? シモン 俺の顔になんかついてるか?』


太陽の陽射しを背に受けて、兄貴はおれの方を向いてにっこり笑っているように思えたけど、影がそれを隠してた。


「ううん、なにもついてないよ。」


兄貴は、おれの返事に何も応えず静かに口元だけで笑みを造り、軽くおれの頭を撫でるように叩くと、そのまま横を通り過ぎて行く。






おれは、兄貴を護りたい。

俺は、兄貴が何を目指しているのか判らないし、敢えて聞く気もないけれど、俺は兄貴を助けて行きたい。
烏滸がましいと、生意気だと失笑されるかもしれないけれど。


こうして、兄貴の頬を優しく撫でる白い風のように、俺はずっと兄貴の側にいたい。
兄貴とずっと一緒にいたい。

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