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哭(シモカミ)

信じられないほどのカミナの血が、グレンのコクピット内を塗らしていた。
たったひとりの人間の身体の中にカミナの身体の中に、こんなにも大量の血が流れているだと言う事を思い知らされた日でもあった。





「カミナさんは シモンさんのラガンとグレンが合体した時には…既に…亡くなられていたんです…」

目を真っ赤に腫らしたロシウは、横たわるカミナの傍に蹲ったまま微動だにしないシモンに向けて、ポツリと呟く。
敵のガンメンからの集中攻撃を受けたのち、リーロンの操る機械から無情にも映し出された、カミナの生体反応の消失の瞬間。ロシウは、それを目の当たりにしたのだ。
あの瞬間、総ての音がかき消えたかの様に思えた。
強引な持論を目上の人間に対しても不遜な態度でぶつけ、揺るぎのない自信に満ちた意志の強い眼でしっかりと前を見詰める姿は、心底凄いと思っていたロシウだったが、その瞬間、言葉を失い漸く見出せた目標のひとつが呆気なく瓦解してしまった事に愕然となっていた。


「…カミナは、カミナのライフゲージは…尽きてるままだわ… なのに… モニターが壊れちゃったのかしら… 生きてるのかしら。死んでないのかしら、カミナは…ッ」

その後、ラガンと合体し、奇跡を起こすような勢いで敵を撃退して行く様を見詰めながらリーロンは、それでもモニターとそのグレンラガンを交互に眺め、震える口唇で混乱した様に呟いていた。

「グレンラガンは動いています。 ですから…きっとカミナさんは 生きているんだと思います。 だって…ッ あんなに凄い技を繰り出して…」

奇跡を見ているかの様に、熱の篭もった口調でロシウはリーロンの言葉にそう返した。





だが奇跡は、所詮奇跡でしかなく????。





止まない雨の中、大人達がカミナの亡骸をグレンから運び出し、全身を塗らす血を丁寧に拭き取り、ぱっくりと開き、剥き出しになった白い骨と、破裂して形を失った心臓が見えない様に胸へ包帯を巻き付け、地面へ敷いた深紅のマントの上にカミナを横たわらせる。
総ての血が出尽くして仕舞っているせいか、カミナの身体は色を失ったように青冷めており、藍に染められていた刺青が黒く沈んだ色へと変色していた。
そして太陽の赤を映した様に、綺麗な赤い色をした瞳はもう二度とみんなへ、シモンへ向けられる事はない。

「……っ」

声無く泣き続けるヨーコの肩を、慰める様にしてリーロンはそっと抱き締め、その頭を抱える様にして自らの胸へと誘う。
子供達は、カミナが死んだことに気付かず『どうして眠ったままなの』と、大人達を困らせていた。
そしてロシウは、蹲るシモンの背中をじっと見詰めていた。






ねえ おれを見て?

おれだけを見て?



ねえ どうして 目を開いてくれないの?



おれはここにいるよ?




ねえ…。



兄貴…。




涙も枯れ果て虚ろな瞳のシモンは蹲っていた身体を僅かに起こし、既に体温を失い冷たくなったカミナの身体にそっと手を伸ばす。
無骨ながら、優しく暖かかった腕は、もうシモンを抱き締めて来ない。

「…あ ぁあぁぁああぁああ……ッ」

黒々とした何かとてつもない重い何かがシモンの胸を突き、それがとても苦しく、そして押し潰されそうなほどに大きく、思わず自らの両腕を抱き締め、シモンは慟哭した。

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