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彼方(イルム)

戦場に漂流する、沈められた艦船。

イルムは一時凌ぎとして、その艦船へとグルンガストを接岸させる。
ウイングガスト形態で定期巡回していた所、敵からの攻撃によって片方のバーニア部分が爆破されてしまい、片肺航行できなくなったが出来そうにないと判断したイルムは、その今は生きてはいない艦船の影へと一時的に機体を隠す事にした。
コックピットから出るとランドムーバーを使って接岸した艦船の非常用ハッチに取り付き、レバーを捻る。
グルンガストに搭乗したまま、救援を待つのもいいが、動きもしないのに搭乗していて何時狙い撃ちされるか判らない状態よりも、死んでいる艦船に乗り込み、そこから救難信号を友軍に送った方が幾分かは生存率が上がるかも知れないと判断した結果だった。
ハッチが開くと同時に中から勢いよく酸素に混ざってゴミや人だったもの、残骸が吐き出され、イルムは慌てて影に入り、落ち着いた所で中へと侵入して行く。

「…まだ、死んでないな」

独り言を言いながらホルスターから銃を抜き、セイフティレバーを外す。
酸素が勢いよく出てきたと言うことは、まだこの艦船の艦内循環機能は作動していると言うことで、外から見たよりもだいぶ良好な状態だと言うことが見てとれた。
だが、何が起きるか判らない状況なのだ。
イルムは銃を片手に、警戒しながらリフトグリップに手を掛ける。
小さなモーター音をさせながら、リフトグリップを掴んだイルムは艦内の通路を進んで行く。
彼が行こうとしている所は艦橋だった。
上手く行けば、ブリッジの通信施設がまだ生きているだろう。
何しろ外から見た状態と比べ、中は見事なほどきれいだったのだ。
もしかしたらまだ生存者もいるかもしれないと思ってしまうほどだったのだから。
だが幾つものエアハッチを開け進んで行くうちに、その甘い考えは捨てざるを得なかった。
イルムが侵入したハッチの周辺は生きていたのだが、その他の場所はやはり外から見た通りの状態だったのだ。
鈍色に焼け焦げ、溶けた配電盤が天井からぶら下がっている通路は、相当な熱量のものがここを通過していった事が判る。

「あっ…くそぅ…このドア半分溶けかかってるじゃねぇか…入れるのか…ここ」

ブリッジ入り口にまで来て、イルムは小さく舌打ちをする。
溶けかけたドアは当然の事、自動では開かないし、レバーを引いてもびくともしない。

「あーもうっ! 折角ここまで来たってのに」

パイロットに支給されている護身用の銃ではどうにもならない事は、直ぐに見て取れた。

「仕方ねぇ…サブ通信室に行くか」

半分溶けかかったドアを恨めしげに見つつ、イルムは今来た通路を戻る事にした。
サブ通信室は、このタイプの艦船だとブリッジから結構離れた位置にある。面倒だか仕方がなかった。
再びリフトグリップを掴み、先ほど侵入して来たハッチを通り過ぎ、暫く行った所でカタパルトデッキ行きのリフトに持ち替え、階下へと降りて行く。

「…っ!?」

ふと、救護室前を通り過ぎようとして、入り口のランプが点いている事に気が付いた。

「生存者が…いるのか…?」

イルムは密閉されている救護室のドアを見詰め、在り得ない話では無いと思いながら暫く考え込んだ。

「えーと…」

基本的に救護室のドアロックはどの艦船も同じ規格な為、コードは覚えていたので、イルムは手早く打ち込んで行く。
プシューッ
気圧の変化と空気の入れ替わる音がし、ドアが開く。

「…うっ」

…が。
そこはある意味地獄絵図だった。
…そう。生存者はいた。
生きているだけなら…と言う意味で。
パイロットスーツに身を包んでいても、血臭を感じてしまうほど、そこは凄まじかった。
みな、必死の思いで救護室まで辿り着いたのだろう。
辿り着く前に息絶えた者もいたのかもしれない。
イルムは、手に持ってた銃を見詰める。
カートリッジを含め、手持ちの銃弾は3パック。45発。

…充分だった。

1人一発。
彼等も軍人の端くれなのだ。
ただ生きているというだけな状態ならば、本人にとっても残された家族にとっても、苦痛でしかない。
それならば…。
自分がこういう状況下に置かれた場合、下す判断はひとつしかない。
あとは、自分の心の問題だけだった。

「…先に行って…待っててくれよ。文句は後から聞くからさ」




そう言ってイルムは、銃口を彼等に向けた

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