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LUNA ROSSA(イングラム×イルム)

あまりみない彩色を放つ赤い瞳は優しく、人当たりの良さ気なムードもあって、周囲からは明るく陽気な人間に見られていた。

だが、本当は知らない。

その赤い瞳が時々見せる、まさに血も凍りそうなほど冷え切った視線でものを見ている事に。
そして、それを知っているのは私だけだと。


コンコン…

イングラムは、何処を見るでもなく蹲る様にベッドに座っているイルムに気付き、部屋の入口の壁を軽くノックした。
「…あっ…何?」
軽く叩いただけなのに、その音に気付くのは、すでに身に付いた性からかもしれない。
「入って、いいか?」
入口の壁にもたれ掛かり、イングラムは薄く笑みを浮かべイルムに問い掛ける。
「…断る必要はないだろう。上官のあんたへ拒否するわきゃないっての…、」
そういったイルムの口調は、何処か冷めたものだった。
「ああ。だが…今の貴様は、絶対的に世界を拒絶しているオーラを出していたからな。そんな時に近づいてみろ、枕の下に隠してある貴様の獲物で速攻で殺られるのがオチだ」
肩を軽く竦め、イングラムはそういって部屋の中へゆっくりと入ってゆく。
「そういうあんだだって、そう簡単には殺られるつもりなんて毛頭ないだろうに…」
漸く肩の力を抜いたのか、イルムは顔を上げイングラムの方を向いて口元に薄い笑みを浮かべた。
「ま、生身での闘いだと俺の方が実力あるだろうしな。そう簡単には殺られないさ」
「…言っておれ。普段から最前線に投入されている貴様なのだ、一戦を退きデスクワーク中心になってしまった私とは、比べものにはならんだろう…」
そんな自信に満ちたイングラムの物言いに、イルムはそう言ってぷいっとそっぽを向く。
「…で、何かあった? ……イルム」
「……さっき、ラウンジでミスッた。気が緩んでたのかもしれない。背後に立ったリュウセイに…殺気を向けてしまってな……もしかしたら怯えさせてしまったかもしれない…」
ぽつりとそう言ったイルムは、再び俯く。

“ハガネのクルーであるイルム”としてはとんでもない失態をしでかしてしまったのかもしれない。

そう思ったからなのだろう。
イングラムは小さく溜息を吐くと、イルムの隣に腰を下ろす。

「…こっち向け、イルム」
普段は明るい笑顔で、面倒見がいいと言う仮面を付けているイルムのもうひとつの一面。
そしてイングラム自身も、イルムと同じく此処ハガネでは本来の自分の姿を偽って生活している。
それは、自分に架せられた任務なのだから、割り切って全うしなければならないのだか。

あの子供達の姿を見ていると時々、本来の自分を忘れそうになる事もあった。
だが、此処にいる自分は、本当の自分ではない。
所詮は借り物の、偽りの姿なのだ。

「…気が立っていたとでも、言い訳しとけばいい。普段から完璧な優しい先輩を演じているイルムなら、その言い訳でも通じると思うが」
揺らめく赤い瞳が、イングラムを見詰める。
「あんたの言葉で癒やされるなんてな…癪に障るが…」
イングラムの言葉に苦笑しながら、イルムはそう言って眼を細める。

「まあ…そういう日もあっていいのではないのか? 偶には私だって、貴様に優しい言葉のひとつぐらい掛けよう」
酷い言われようだが、そんな言葉に動じもせずイングラムはイルムの長い髪の一房にそっと触れ、口接ける。
「…ん」

揺れるイルムの赤い瞳の色が、イングラムの前だけで不安げな色彩を放つ。
それは、普段ならあり得ない事だった。
「…だが、もしもそれでも詮索してくる様なら…ちょっとばかり脅せばいい…それでも駄目なら……」
そう言ったイングラムの眼に獰猛な色彩が宿り、口元は何処か歪にゆがんだ笑みが浮かんでいた。
「…物騒だな、イングラム。まあ…そこがあんたのあんたたる由縁なんだけどな……」
イルムはイングラムのその言葉に、喉の奥の方で『ククク…』と笑みを零し、赤い色の狂った月の様な瞳をうっすらと歪ませながら、両腕をイングラムの肩に絡ませる。
「俺は、あんたが何を考えて此処にいつづけるか判らねえ。そして、何をしようとしてるのかもな。俺の生死すら利用しようとしてるの位はお見通しだ。だが…そう簡単には……」
そしてイングラムの手が、そのイルムの言葉話聞きつつ昏い笑みを浮かべながら背に廻される。




優しくて不器用なこの男は、自分の本質に気付いてない。

悟りきった僧の様な面立ちを持っているのにも関わらず、その仮面の下には血に飢えた獣の魂を持っている反面、純粋で汚れのない魂も持ち合わせている。

だから私は惹かれるのかもしれない。

自分とは異なる存在に、相反する存在に惹かれる様に、私たちは……。




ふたつだった影がひとつになり、その影はゆっくりとベッドに倒れ込んだ。

そして………。
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