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戦場にて


「ラグランジュ・ポイント、L3付近にて大規模な現在戦闘が行われており、支援要請が届いた。グルンガストのイルムガルト中尉以下、オクトパス小隊は至急応援に向かってくれたまえ」

簡潔な指示の下、イルムのグルンガストと共に、オクトパス小隊がデッキから艦外へと発進してゆく。

『こちらグルンガスト、イルムガルト・カザハラ中尉! 俺はこのままこの宙域に残り正面から来る奴らを迎撃して行く。オクトパス小隊は、先行して回り込む様な形で散開し各個敵を迎撃に向かう。こんな状況じゃ、作戦らしい作戦なんか効き目はないだろうから、後は各自の判断に任せる。いいなっ!』

イルムはそう言って、グリップを握り締める。
自分が指揮官を務める器ではないことぐらい、充分判っていた。
だが、この長きに渡る闘いで、実地訓練もなく戦場に赴き散って行く新米兵士が余りにも多すぎる為、気が付けば基本的に単独行動の特機乗りの自分にすら、指揮官役が回って来ていた。

「…指揮官だなんて…責任…重いぜ…」

思っていた言葉が、ぽつりと口から滑る。既に今日だけで、スクランブルは4回。
内、迎撃に向かえたのは2回。1回は索敵のみで終了し、もう1回はスクランブルが掛かっただけで、彼等は戦場に赴く間もなく、スクランブルを要請して来た哨戒分隊は敵機によって沈黙させられていた。

『……イルム中尉っ! 応答願いますっ!』

ヘッドフォンから、少しばかり焦り気味のタスクの声が飛び込んで来た。
戦場では、一瞬の隙が死を招く事が判っていながら、イルムはほんの僅かな間、己の思考に耽ってしまっていたのに気付く。

『…済まないっ! 何だ?』

『我々は正面からではなくこの宙域に待機するようにとの連絡が入りましたっ!索敵班からの連絡で、我々の出撃に気が付いた敵機が、後続部隊を発進させた模様です。反対に中尉が先行して後続部隊を迎撃する様に…との命令です』

スピーカーから聞こえるタスクの声が、微妙に上擦っているのは気のせいだろうか。
自分達に気が付いて出撃してきた敵機の量は、まだ判明していない。
敵側の広域ジャミングのせいで、レーダーが役に立たないのだ。

『了解。グルンガスト、イルム機、作戦を変更。先行して敵機の増援部隊の殲滅に移行します』

高速移動に向けて、オートモードにしてあったバーニアの姿勢制御の角度を素早く変更する。

『健闘を祈ります』

各機からの通信がイルムのヘッドフォンに入って来た。
ここにいる誰もが皆、無茶な命令なのだと判っていたのだ。

『グルンガスト壱式、イルム行くぜっ!』

だがイルムはそう簡潔に答えるしかなかった。それ以上、答える術がなかったからだ。

「…俺がここで待機した方が…敵殲滅は楽だと思うんだがなあ……」


ポツリとイルムは小さくごちると最大出力でバーニアを噴かし、彼の駆るウイングガストは軌跡を描いて見る間にその宙域から姿を消すのだった。


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