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夜毎の夢 夜毎の愛(ライリュウ)

夢を見ていた。

その夢は、あの事故以来幾度となく繰り返され、半ば半分悪夢と化していた。だがその夢に、いつからだろう。春の陽射しの様な柔らかな暖かい温もりを感じる様になったのは。

そしてその頃からだろうか、腕に痛みを感じなくなったのは。

認めたくはなかったが、己にとってその暖かな温もりの大本がいったい誰なのか、充分過ぎる程判っていた。


リュウセイ・ダテ。


それが俺にとって、昏く鬱々とした暗闇の中の悪夢から一条の光りを灯し、そこから救い出してくれた男の名前だった。


その日はいつもの様に、二手に分かれアーガマの周囲半径15キロ周辺の偵察を兼ねた哨戒飛行を、リュウセイの搭乗するR?1と共に行っていた。

「・・・なあライ、俺がこんな事言うのは、何かお門違いなのかもしれないけどさ、も少しみんなとうち解けてみねぇか?」

モニターをオフにした状態のまま、リュウセイは呟く様にぽつりと俺へ話しかけてくる。リュウセイやアヤに対しては普段と変わりない態度で接していたが、他のメンバー即ち、アーガマに搭乗している連邦軍と民間人の混成チームに対しての俺の態度の事を、リュウセイは言っているのだろう。

「・・・コバヤシ大尉も、そう言っているのか?」

わざと・・・と言う訳ではないが少々遠回しな口調で、俺はリュウセイに向かって自分に対する問い掛けを非難するニュアンスを匂わせてみた。

「なんであんたは、そんな言い方しか出来ないかなあ。そりゃ、俺だって、思ってる事を上手く喋れる方じゃねえけど、ライと喋ってるとまだ俺の方がマシな様な気がするぜ。」

音声オンリーの通信手段で会話していたのだが、今のリュウセイの口調から、彼がどんな顔をして喋っているか手に取る様に判る。

差ほど長いつき合いではないが、短期間の間にリュウセイの行動パターンや思考パターンは大体に於いて読める様になっていたのだ。 

だがリュウセイは知らない。 

そんな彼の存在こそが、ライにとって心の支えになっているのだと。

自分を貶めている訳ではないが、あの事故からリュウセイに出逢うまでは、実際の所、生きる屍の様だったかもしれない。

生きてゆく自信も、意義も失い、欠けてしまった肉体の一部にばかり心を捕らわれ心を閉ざし、無くなってしまった左手で目を塞いでいた。

後ろを向いてしまったライを励まそうと、あの事故の起きた現場にいた人物の一人は本人自身も酷く重傷であったのにも関わらず、励まそうとしてくれたのか幾度となくライの部屋を訪れて来てくれていたのだか、ライにはどうしても彼に会う事が出来ず部屋の扉も心の扉も閉ざしていた。

そう言えば、雰囲気こそ違え、醸し出しているものは、あの上官とリュウセイは似ている部分が在るような気がする。 

ライはふと、リュウセイの声を聞きながらそんな事を考えてしまった。

「・・・何を考えているんだ・・・俺は。不謹慎な。」

 任務中だと言うのにも関わらず、現在の動向に関係のないを考えてしまったライは、誰も見ていないのに何故か気恥ずかしい思いに捕らわれてしまった。 リュウセイはリュウセイなのだ。 

誰も代わりにはなれないし、誰の代わりにもならない。 

勿論、利害関係を考えれば、どう考えてもリュウセイが自分にとって有益な存在だとはとても思えない。だが、リュウセイなのだ。

どんな言葉で飾り立てても、それらは意味を為さない。

しかし、それを言葉や態度で顕すのはライにとって決して容易な事ではなく。

「・・・おーいライ? 返事しろよなー。寝てんのかー?」

音声オンリーのモニターから、何の応答もないライに対して不審に思ったのかリュウセイが不安げな声色で問い掛けてくる。

そんなリュウセイの言葉が、思案していたライの耳に飛び込んで来た為、

「・・・っ! 寝てなどいない。少々考え事をしていただけだ。それよりリュウセイ、どうもこの辺りはミノフスキー粒子の濃度が高い様だ。その為有視界飛行の状態で索的しなければならないが・・・そっちの様子はどうだ。」 

と、まるで自分の今の気持ちを誤魔化すかの様な口調で言い放つ。

実際、モニターをONにしていなくて正解だった。 

だが感の良いリュウセイにはどうしても、対応の不自然さを感じ取られてしまったらしく、

「・・・何かあったのかライ。何ならオレでもよけりゃ相談に乗るけど・・・って、そーいうキャラじゃねえか、おまえと違ってオレは。」 

リュウセイらしくない、少し震え気味な声で話し掛けて来た。 

端から見れば、普段のリュウセイはスパロボおたくで少しばかりお調子者の、しかし普段から総てに懸けて全力疾走するタイプの人間に見える。

だがそれは表面上の事でしかなく、本当は豊かな感性と、物事の知己を瞬時判断する事の出来る繊細な面をも持ち合わせているのだ。そんなだからこそ、ライはリュウセイに惹かれたのかもしれない。 

自分が到底持つ事の出来ない純粋な、真っ直ぐな心。 

その純粋で真っ直ぐな心を映し出しているかの様な、暖かで透明な色合いを持つ明るい榛色の瞳。多分死ぬまで言葉にする事はないだろうが、そのリュウセイの総てが自分にとって憧憬たる存在であるのだ。 

そう。リュウセイさえ居れば、自分はもう二度と心の奥底にある昏い闇色をした世界に囚われる事はないだろう。

だからもし、その世界に再び戻ってしまう様な事が起きてしまったとしたら、自分は二度とこの世界を愛する事はないだろうし、視るものすべてが敵に見えてしまうだろう。 

「・・・リュウセイに心配される程の事ではない。それより・・・。」 

敵機を発見したライは、冷静な口調でリュウセイに向かって敵が接近しつつある事を伝えた。



あの悪夢を視なくなってから、ライの夢には度々リュウセイが現れる。

それは、時に哀しみに沈む心を導いてくれる担い手であったり、ただそこに在るだけの存在であったりと、出現するパターンは様々だった。 

しかしひとつ言える事は、それらは総てライの心の中に何か蟠りや支えるものがあった時に夢となって現れるのだ。 

勿論それは、所詮夢でしかないのかもしれない。 

ひとは、そんなに便利な生き物ではないのだから。 

幾らリュウセイが、ひととして考えれば非常に優れた遺伝子を保有していたとしても、それは飽くまでもDNAの配列上での事だ。 

本人からすれば、偶然の産物に過ぎないだろう。

その偶然の産物によって本来なら体験しなくてもいい様な闘いを強いられ、苦しめられたのだからそう考えて当然だろう。普通は、そう考える。 

だが、リュウセイは違った。 

いつも前向きで、苦しくても健気なほど上を向いていた。


本当は辛いだろうに。本当は哀しいだろうに。

何故そんなに笑っていられるのか。 

何故そんなに前を向いていられるのか。 

自分を励ましてくれているはずのリュウセイの夢は、何故か哀しくて。

夜毎その想いは募ってゆくばかり。

だからライは思う。 

夜毎夢に現れ、自分を助けてくれたリュウセイに、今度は自分が手を差し伸べるべきなのだと。夜毎の夢に応えるには、夜毎の愛で支えるべきなのだと。 


だからーーーリュウセイ。 

俺はおまえを助ける。この、生命に代えてもーーー。
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