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START OF DANCE MACABRE(ナイトメア計画)

《1》
士官学校を卒業し軍へ入隊したその年の誕生日にイルムは父親に呼ばれ、テスラ・ライヒ研究所へと赴いた。
そして、幼なじみのロバートに連れられて一般人の入れない特別区域の格納庫へと行くと、父親が自慢げに巨大スーパーロボットのグルンガスト壱式を大きなブルーのリボンで飾り、

「息子よー♪ 今日は軍人になって初の誕生日だぞー。私からの誕生日プレゼントだっ!」

と、自慢げにわざわざポーズをとってイルムへと見せつけたのだ。

「…お… おやじ…」

そんな父親に、思わずイルムは頭を抱える。昔からそうだった。
誕生日の度にブースターつきの三輪車や変形機構つき自転車などを開発してはプレゼントしてくれるのは、イルムとしてはとても嬉しかったのだが、その度に大怪我をしては入退院を繰り返し、気が付けば病院とはまるで友達の家へ行くような感覚で通うようになっていたのだ。
そのお陰か、子供の頃から父親譲りの話術を巧みに使い、病院の美人看護士や医師と仲良くなれてはいたのだが。
そしてとうとう、研究所の所費を使ってこんな巨大ロボットを誕生日プレゼントと言い出す始末だ。

「何をがっくりしているんだ。入隊式の時にはプレゼントをあげられなかったからな。愛する息子へお祝いのプレゼントをあげられなかった時の私の哀しみは計り知れなかったぞ。だーかーらー、その時のお祝いのプレゼントと誕生日プレゼントを一緒にした訳だ。うれしいだろう?」

毎度のマイペースぶりに頭を抱えてはいたが、

「…出所不明金とかで作った訳じゃねえよな」

イルムは思わず目の前のグルンガスト壱式と言われる巨大スーパーロボットを眺めつつぽつりと呟く。

「そこの所は任せなさい。パトロンの某コングロマジットの社長に“息子の誕生日にスーパーロボットをプレゼントしたい”と言ったら、ポーンとお金をくれたよ♪」

「……こ…この…」

そんなイルムの呟きに父親はしれっとした態度でそう応えてきた為、イルムは思わず拳を握りしめ言葉を失った。そんな事を言って億単位の大金をパトロンから搾り取る目の前のバカ親もバカ親だが、それにポンと金を渡すパトロンもパトロンだと。

「さて、イルムガルト。早く乗ってくれ。パパは、早くイルムガルトがこのグルンガストに乗って活躍する姿をみたいぞ」

研究者馬鹿と言うか、科学者馬鹿と言うか親馬鹿丸出しの自分の父親に、流石に頭がクラリとしたイルムは、

「あのなー… 幾ら士官学校次席で卒業したからってさ、直ぐに実戦配置される訳じゃないし、こんな特機に乗れる訳ないじゃねーかよー。ちったあ考えてみろってーの」

目をきらきらさせて自分を見てくる自分の父親に呆れて仕舞う。
卒業して直ぐに少尉待遇とは言え、所詮ペーペーなのだ。幾ら頑張っても次期戦闘機のパイロットになれれば御の字だというのに…と肩を落とす。主席で卒業したリンなら、もしかしたら判らないけれど。
イルムはそう思いつつ、脳裏に過ぎる思いを振り払う。

「大丈夫だ、息子よ。次に連邦軍に配備されるPTのパイロット選出会議にパパも招聘されているからね、イルムガルトの事を推しておくよ」

「…て、なんじゃそりゃーっ!」

これでは軍の腐敗に梃子入れしているのと同じではないじゃないかと、流石に暢気を決め込もうとしていたイルムであったが思わず叫んでしまい、

「た…頼むから…それだけは止めてくれ…。俺は実力でPT乗りになりたいから…」

と、泣きついてしまった。
しかし、そんなイルムの心の内を知って知らずか、

「流石、我が息子。いつも研究で私がおらず、ナニーに任せっきりだったけれど、こんなに立派に育って…パパは本当に嬉しいぞっ!」

イルムの言葉に感動してか、そう大袈裟に言うと泣きついてきたイルムをぎゅうーっと抱き締めたのだった。

《2》
リフトに乗り、タッチパネルに認証番号を打ち込むとリフトアームが作動し、グルンガストの傍に接岸されてイルムはそこから搭乗する。
巨大なスーパーロボットだけあって、その内部は複雑な機構となっており幾つものある隔壁を越えて、漸く最上部にあるコクピットへと乗り込めた。

「すっげえ…」

コクピットに辿り着くなり、イルムが発した第一声は驚嘆の一言だった。
それもその筈。
当然ながらまだイルムは実戦経験など無く、次期戦闘機のシミュレーターでしかコクピットらしいコクピットを拝んだ事がなかったからだった。

「親父ーーっ! なんか見たことねえパネルやらレバーやら、めちゃくちゃたくさんあるんだけど、これ全部使うのかよーっ」

搭乗する際に渡されたマニュアルをペラペラの眺めつつ、シートに腰を下ろし、ひとつずつ確かめるようにしてスイッチを入れて行く。

『ああ、だが大丈夫だ。そのグルンガストは音声認識装置が内蔵されているのでな、基本的動作は当然ながらマニュアル操作になるが、武器に関する操作は総て言葉で入力出来るぞー。だから、戦闘機やPTなんかよりもずっと扱いは楽だと思う』

と、モニター越しから指示をするジョナサンの表情が少しだけ曇るが、それにイルムが気付く事無くコクピット内の総てのコンソールパネルとモニター、アームにトリガー、スティックを総て念入りにチェックし始めていた。

「ふーん、すっげえなあ… ガキの頃から親父がいろんなモン作ってたけど、それら総てを踏襲したもんがこのグルンガストって訳かー。写真でみたPTのコクピットより断然広いし…これ全部を覚えるのは手間だけど…覚えちまえば、あとは何とかなりそうだな」

マニュアル通り総てスイッチを入れ終えると、グルンガストの巨体が静かに唸りを上げ出す。
コクピットではグルンガストが放つ轟音を聞くことはないが、それでもその振動と独特のくぐもった音の響きにイルムは思わず鳥肌が立つ様な感覚に囚われ、背筋がぞわりとする。
どうやってもシミュレーターからは感じ取る事が出来ない生の音。
振動。
そしてピリピリと痺れる感覚。
それらは、こうしたロボットだけに限ったものではなく、戦闘機でもそうだった。

「お、火が入ったみたいだな」

イルムは、エネルギーゲインをチラリと見て呟く。

「…あれ? なんだ…これ… マニュアルに載ってない…」

エネルギーゲインに刻まれた、謎の数字の羅列と不思議な暗号めいた文字を見つけ、一瞬だけイルムはそれに魅入ってしまったが、マニュアルに何も書かれていないと言うことは、パイロットにとっては必要のないものだと判断し、

「さて…と。じゃあ親父。いっちょ起動させてみますか」

上部から下がるコンソールアームを移動させ、小型マニピュレーターを使って次々と半全天モニターをクリアにしていった。

『よし。では、プラットホームを移動させるから、そっちからカタパルトへ移動しなさい』

マイクを使ってプラットホームのコンソールからグルンガストに搭乗しているイルムへ向けて話す口調は、先ほどとは打って変わり、父親ではなく一科学者のものになっていたし、イルムも“親父”とは返しているが、その口調は甘えから来ているものからではない。

「了解。じゃ、カタパルトの方に移動する」

シート横にあるレバーをぐいと握りしめ、そのまま引き寄せ、両脚は固定された幾つかあるペダルのうちのメインであるものをぐぐ…っと踏みしめるようにして押しつけたのだった。

《3》
プラットホームでジョナサンがグルンガストの発射シークエンスを行っていた頃、研究室にある大型コンピュータのブラックボックスが起動し始め、同時にそのコンピュータに連動しているグルンガストのコクピット内にある特殊な装置も起動を開始した。
静かにそこにいる研究者誰1人として、そのコンピュータの存在する本当の意味を知ることのない、沈黙のコンピューターは意味を知るもの以外にとってはただのブラックボックスでしかない。




「よし…と。グルンガスト…出るぞ」

イルムの言葉に反応して、グルンガストの背後にあるブラストリフレクターが立ち上がると同時にジェネレーターがフル稼働始め、ブースターが点火される。
同時にリニアレールが作動開始し、グルンガストの機体がフワリと浮き上がった瞬間、カタパルトのリニアレールの反発力と点火されたブースターの力によってグルンガストは格納庫から一気に飛び立って行った。

『グルンガスト形態のままだと、スピードに威力がないのでな、そのまま空を飛んでいるつもりならウイングガストへ変型するといい』

モニターでグルンガストの起動状態をトレースしつつ、ジョナサンはグルンガストに搭乗しているイルムへ向けてマイクでそう伝える。

「…って、こいつ変型するのかよ…おい…すっげぇー…」

父親の言葉に目を丸くしつつも、グルンガストの通常飛行を維持しイルムはコンソールパネルに表示されている機能のガイドに沿ってスイッチを次々と入れて行く。

『あ。そうそう言うのを忘れていたが、変型と同時にコクピットが移動するようになっているからな。ちゃんとシートに深く座っておけよ』

突然モニター越しから、父親がにっこり笑ってマイクに向かってそう話してきた事に、スイッチを手早く入れていたイルムの手が思わず止まり

「もっとそれを早く言えぇえぇえーーーーーーっ!!」

と、イルムはそう叫んだまま自動的に開かれた後部ハッチへ、シートごと消えていった。




「くそ… あのバカ親父… 死ぬかと思った…」

ぜぃぜぃと肩で息をしつつ、シートにしがみついて事なきを得たイルムは、移動した先のコクピットの移動が、とんでも無い所へ移動した訳ではなく、ただ、グルンガストが変型すると同時にコクピットの位置に補正が掛かるために、頭部コクピットが微妙に展開しただけだと言う事が判った。

「えーと…ウイングガスト…だよな…」

人型形態のグルンガストと違って、戦闘機形態のウイングガストのコクピットは僅かだがシンプルな作りになっており、直ぐにどんな形態か把握したイルムは、ニヤリと笑って研究所周辺の空域から一気に海上へと向かった。

『こらこら…っ 基地周辺空域から出るんじゃない。許可は一応取ってあるが、海上へ出ると連邦軍のエマージェンシーが…』

子供の頃は、親である自分のような科学者に憧れていたイルムであったが、中学生になってから自分が科学者の器では無いことに気付いたのか、卒業と同時に士官学校へ進む事を選択した。
当然ながら、父親のジョナサンはそれに反対する事はなかったが、もともとイルムが科学者ではなく、戦闘機乗りに憧れていたことを知っていたので、それに似たものを製作しては誕生日に贈っていたのだ。
そんなイルムの心情を知っていた同級生で幼なじみのロバートは、元来科学者気質だった為にイルムが諦めた道を進む事にし、今ではジョナサンの隣に居たのだ。

「えー 折角のテスト飛行じゃねぇかよー」

父親の言葉にイルムは少しだけむう…と頬を膨らませる。
普通なら、こんな特殊なロボットに乗り、それも音速で飛んでいるのにも関わらずこれだけ余裕のある会話が出来るのは、かねてより鍛えられた身体と精神だけでなく、コクピット内の環境を一定のバランスに保つようなシステムがグルンガストには搭載されていたからだった。

「…っ」

ふと、そう言ってからイルムの頭の奧に、チリっと何かが触れて来た気がして顔を上げる。

「…なんだ…これ…」

電気が走るような刺激で、それでいて人の思念の様な機械的ではないものの存在の違和感。
イルムはスティックをぐいと握りしめ、超低空飛行に変更して連邦軍のレーターに引っかからないように操縦を始めつつ首を傾げた。

「親父ー このグルンガストさー 音声認識装置以外なんか搭載してるかー?」

ふとイルムは普通に抱いた疑問を、モニター越しの父親に質問する。
その瞬間、父親の顔が再び曇ったのだがモニター越しなためか、流石にイルムも僅かに表情の機微に気付く事はなかく、

『あ、ああ。いろいろシステムの制御の関係でな、今回初めて脳波制御装置と言うものを搭載してある。まあ、今の所は別に気にしなくていいぞ、実戦に使う時に必要になるかもしれんが、まあそんな事はないだろうからな…』

と、ジョナサンはイルムに向かってそう説明をするのだった。

《4》
ソニック・ブームを轟かせ、海上水面ギリギリをウイングガストが飛翔する。
イルムの思考を読んでいるかのように、ウイングガストは連邦軍のレーダー網の範囲ギリギリの位置を計算し、モニターにそれらを弾きだして行くルートを選び、イルムはその通りに飛ぶ。
レバーを握りしめ、生命維持装置で守られたコクピットでも僅かに感じるGの感覚に自分の父親がどれだけ凄いロボットを製作したのか身を持って体験していたのだ。

「すげえ… 俺…操縦してら… シミュレーターのスティックしか握ったことなかったのに…」

脳波制御装置が作動しているお陰で初めて操縦しても、総て内蔵されたコンピューターが補正を行いセミオート状態で飛行が可能であったため、イルムは自分が思い描いた通りに飛行するウイングガストの性能に感嘆の声を上げていた。

スピードが変化すれば、モニターに逐一そのデータが映し出され、フラップの長さが変動し調整する。
音声認識だけでもイルムにとっては信じられない機能であったのに、この脳波制御装置は更にその上を行く想像に絶し難い機能が満載であった。
ただコクピットのシートに座っているだけなのに何故、脳内で意識した事を半具現化してその通りにウイングガストが起動するのか考えつつも、多分このグルンガストはPTとは別に次期戦力として軍に導入される期待の試作機に違いないと、イルムは考えた。

「…ま、親父は抜け目がねえからな」

今までだってそうだった。
自分に誕生日プレゼントと称して渡され、死にかけてきた数々の発明品の殆どが現在軍用化され、それによってテスラ・ライヒ研究所の“ジョナサン・カザハラ”は此処まで来たのだ。
当然ながら普通なら自分を何度も試作機のテストさせるような父親を本来なら好きになれるはずがないのだが、持った気質というか、それ以上に自分が本当に愛され大切に育てられていた事に気付いていたし、男手1人でここまで一生懸命に育ててくれたというのを身を以て知っていたからこそ、父親の力になりたいと思っていたのだ。

「さて…と、そろそろ帰るか」

飛行時間と航空空域のチェックをして、そろそろ限界かも知れないと感じたイルムは、飛行航路を変更するようにコンソールへ打ち込んで指示をし、モニターでそれらの変更を確認してから一度ぐいと背伸びをするように身体を反らしてから、スティックを握りしめた。








「…どうだ? 01は悪夢に気付いた様子かね」

プラットホームのコンソール前でグルンガストから送られてくるデータをチェックしているジョナサンの表情が暗く翳っていた所へ、背後からコバヤシ博士と外部からの招聘学者であるギャラガー博士が現れた。

「息子をその名前で呼ぶのは止めて頂きたい。まだテストなだけで…搭載は決定していないんだがらな」

顔色が余り思わしくないジョナサンは、コバヤシ博士のその発言を取り消すように顔を上げた。
その表情を見て、コバヤシ博士は小さく頷き、

「…貴方の息子さんは…飄々としてはいるが…あれで…なかなか聡いからな…」

と、モニターに打ち出されたデータをチラと覗き込み呟く。

「…悪夢の存在には気付いてないとは思うが… 封印しよう。やはりこの計画は無謀すぎる。パイロットを消耗品として扱うこのシステムは…」

ジョナサンの表情は、自らの進退を賭けてもこの計画を中止しようという意気込みを感じさせる程のものだった。

「息子さんに、何かあったんですか?」

滅多に見せないそんなジョナサンの表情に、ギャラガー博士はふと、問い掛けるが、

「……いや」

ジョナサンはそう一言だけ呟き、首を振ったのだった。
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