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Intermission : ATX-01(ナイトメア計画)

「…イルムガルト中尉」

本来、戦闘から戻ってきたグルンガストが格納され、整備点検されている筈のそこに、グルンガストの姿はなく、そして軽口を叩きながらタラップから下りて来る早々シャワールームへと駆け込むイルムの姿もない。ただあるのは、静まりかえった緊張感と、グルンガストの帰投を待ち続けている整備兵の重苦しい沈黙だけだった。
偶然にも極東基地へ立ち寄っていたゼンガーは、複雑な面持ちで空っぽな格納庫で独り佇んでいた。
この事実を知ったら、キョウスケとエクセレンはどう思うだろう…ゼンガーは唇を引き締め、グルンガストを待ち続けているプラットホームを睨み付けた。

軽薄に風体や言動にはあわない、実は真面目で堅実な戦歴の持ち主のイルムを、決してゼンガーは嫌いではなかった。出撃すれば、必ず戦績を上げてくる。
だが、そんな突出した能力が、彼の教員指導監であった上官に疎ましがられたのだろう。
キョウスケもそうだったが、華々しい戦歴のわりに階級は高いものではなく、一部の者達からは陰謀説まで上がっていたほどだったが、当の本人達は至って気にしているようではなかった。

「…何故、戻って来ないのだ」

当然ながら、パイロットは戦士だ。
戦場に赴くと言う事は、死地に向かうと言う事なのだと十二分にゼンガーも判ってはいたが、特機を駆るイルムガルトが戻ってこないと言う知らせを聞かされた時に受けた僅かな眩暈にも似たショックは、自分でも衝撃だった。
自らの目で確かめた訳ではない。
戦闘で消息を絶ち、そのままM.I.A(戦闘中行方不明者)となるパイロットは幾らでもいる。
当然ながらそのままK.I.A(作戦中戦死者)に移行する者も多い。
新兵も、ベテランもしかり。
だが何処かいつの間にか、特機乗り同士の間では帰投して当然と言うあり得ない意識が働いていたのかもしれなかったのだ。

幾ら、パイロットは戦死した場合に対して遺言として遺書を書かされているとはいえ。



「…」


ゼンガーは早く戻って来いと言葉には出せず、拳をぎゅっと握りしめるとくるりと踵を返し無言のままそこから立ち去った。
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