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PROJECT NIGHTMERE?1?(ナイトメア計画)

《序章》
「神島沖ポイント707地点に、アンノウン出現っ! 識別信号レッドっ!」
オペレーターの声が司令部に響き渡り、伊豆基地が俄に慌ただしくなる。
ブリーフィングルームで待機していたイルムは、突然鳴り響くアラートの音に慣れた様子でリーディングエリアへと駈け出して行く。
「ウイングガスト、ハンガーエリアにて、出撃可能ですっ!」
ハンガーデッキを駆け抜けると、オペレーターの声がハンガーに響き渡り、その声に促されるようにイルムは既にグルンガストからウイングガストに変形している機体に接岸してあるタラップへと駆け上り、コクピットへと飛び込んだ。
「よし 出撃させろっ!」
司令室からの命令に、イルムはコンソールパネルへオートから音声入力モードへと変更を打ち込んで行く。
「了解しましたっ! イルムガルト中尉、出撃して下さいっ!」
司令室でのやり取りをヘッドレシーバーから聞こえてくる。
総て入力し終え、コントロールの管理がトラフィッカーの手から自分へ移るのを確認し、
「アイハブ!」
と声を上げる。
反対にレシーバーから“ユーハブ”とトラフィッカーから返事が戻り、完全にウイングガストの操縦権が自分へ移った事が判り、同時に
「了解。システム・オールグリーン 射出ビーコン確認 ウイングガスト 出るっ!」
カタパルトデッキに移動したウイングガストは、ライトグリーンに輝くビーコンの誘導によって轟音と共に飛び立って行った。



「ウイングガスト 神島沖ポイント707到達しました」
敵機を視認出来ない為、ジャイロスコープと示し併せつつレーダーサーチングするイルムは、コンソールパネルの上を忙しなく指を踊らせていた。
「よし…っ いたっ!」
敵機は光学迷彩仕様なのか視認出来ないが、レーダーには映り込む為、それを頼りに探査を行わなければならないのが面倒ではあったが、それでもこの方法が現段階では一番確実であるため、グルンガストの装備からすると不便きわまりなかったが妥協するしかない。
「…っ」
レーダーで存在位置を確認し、モニターから映し出される敵機の姿を発見すると、イルムはコントローラーを握りしめ、その敵機が上陸している島へと降下していった。



《始まり》
そこは、地獄だった。
いや、地獄と表現出来るほど、生易しい状態ではなかった。
「…酷…い… なんだって…こん…な…」
グルンガストのコクピットから、上陸した島の町の全景を呆然と眺め、イルムは絶句する。
今まで、各地の戦場を点々と渡り歩いてきてはいたが、ここまで酷いものは初めてだった。
宙空に浮かぶ、アンノウン…敵機から伸びた先端がドリルのように鋭く尖った無数の触手が、町中にある総てのものを貫いていたのだ。
そしてそれは当然ながら、ものだけでなく人も含まれており…。

「……っ!」

伸びた触手の1本が本体に引き寄せられると、そこには逃れる事が出来ないまま身体を貫かれ絶命し無惨な姿の血塗れの少女の遺体が引っかかったままの状態で、コクピットのモニター画像をアップにしていたイルムの視界に入った。
一瞬、その少女の長く赤い髪が、恋人とダブり、思わず首を振る。
そして眼前の敵が今まで地上に降下してきた敵とは確実に違う相手なのだと、瞬間イルムは判断した。

「…間に合わなくて…済まなかった…」

心の中でイルムはモニターに映る少女の遺体に向かってそう言うと、コンソールパネルの上を指が素早く手動いて行き、システムをオートからマニュアルに切り替える。
そして同時に頭上のパネルからマニピュレーターが伸びてくると、それを掴んで引き下ろし、システム変更をするとそのマニピュレーターがトリガーへと変化した。


「ブースト・ナックルっっ!!!!!!」

そして、そのトリガーを握り締めるとそのまま勢いをつけて引き寄せ叫んだ。





闘いが、始まった…。



《予兆》
モニター越しに見える敵はクリスタルの様な輝きを放ち、先端がドリルのように鋭角で幾つもの突起を触手のように伸ばし、のたうち暴れさせ地上の町を一つ地獄絵図にしてしまった、アンノウン。
咄嗟にブーストナックルを放ったが、その敵はそれをまるで予測していたかの如く、その触手のような突起が前方へと集束し、放ったブーストナックルを絡めて受け止めるとそのまま地面へと叩きつける。
「こっちの行動が…読めるって…事か…」
そう眼前の敵を睨み据え、イルムはそう吐き捨てると乾いた唇を舌で何度も濡らす。
全身に走る緊張を、その行動で押さえつけている様だった。
「さぁーて…」
握りしめたグローブの中の手に、じっとりと汗が滲む。
「もたもたしてたら… こっちがやられちまうから…なっ!」
コンソールパネル上に表示される赤い文字を視界の隅に、ペダルを踏み込みトリガーを引いた。
「行けぇぇーーーーーーっ!」
踏み込むペダルに併せ、グルンガストが爆音をあげて突進して行く。
残念ながら、この機体は他のパーソナルトルーパーと違い接近戦用に造られており、射程距離が短く遠距離攻撃に向いてはいない為に、ある程度の所まで敵の懐へと入らなければならなかった。
だが、その代わりに巨大で装甲も特殊VG合金で覆われており、多少の爆撃を受けてもびくともしない様になっていた。
地面に叩きつけられたブーストナックルを回収するためのプログラムを素早く打ち込み、触手の絡んだ腕がブースターの逆噴射によって引き千切って行き、グルンガストの元へと戻る。
僅かな振動音と共にグルンガストの腕の肘の関節部へ放たれていた部分が結合すると直ぐにイルムは、マニピュレーターが正常に稼働するかの確認をする為に指を折り込む。
「…」
そして突進をかけた敵に向け両腕をあげ、自分に向かってくる錐状に集束された触手に向かって掴みかかると、捻じりあげ引き寄せそれをブチブチと力任せに引き千切った。

『ォォオォォォォォォォオォオーーーーーーーーーン…』

幾つもの触手状のドリルがひとつに集束し、錐となってグルンガストを貫こうとしていた敵は、そのグルンガストの行動に対応出来ず、その部分を引き千切られるとその巨大な身体を震わせ、全身を振動させて低い唸り声の様な音を発したのだ。
「…な…にっ」
その音は、どちらかと言うと音と言うよりも人の呻き声にも似ており、イルムは瞬間的に周波数を捉える為、コンソール上で解析を始めつつ、同時に次の攻撃パターンを瞬時に考え、触手と触手の狭間の僅かな隙間に手を捻じ込め、
「オメガ・レーザーーーっ!」
と叫び、音声入力でその僅かな隙間へレーザーを浴びせる。
鋭い光が奔流となり迸ると、敵は再び低い唸りをあげる様にその巨体を震わせた。

と、その時だった。

突然激しくアラームが鳴り響き、コンソールパネルの一部がレッドシグナルを明滅始め、
“装甲被弾脚部駆動部30% コンデンショングリーン 胸部45% シグナルイエロー ファイナルビーム発射不可能”
コンピューターからの音声アテンションがコクピット内に鳴り響かせたのだった。



引千切った触手をそのまま投げ捨てると、地響きを立てて地面に落ちる。
普段なら町中での戦闘を極力控えるイルムだったが、足元の町は既に生命反応ゼロだ。
同時に、コンピューターの解析が確かなら、自分が考えている事が正しく、まずはそれを行う方が先だと考え、イルムは敵機の触手を払い、如何にして起動不能にするかを考えていた。
“警告、警告。前方、収束するエネルギー反応あり”
コンピューターがけたたましい警告音と共に、モニターに映る敵が掲げてくるメーザー砲らしきものの砲身がグルンガストに向けられている事を告げて来る。
「チッ… やっぱそれもありってか…っ!」
四方に展開されている触手とは異なる形状のものが大きく拡がりグルンガストに向けられ、その先端からの高熱元反応で真っ赤に染まり点滅するモニターに映し出された。
「やられるかってーの…っ」
引き千切った触手を投げ捨てたグルンガストの手にはいつの間にか召喚された計都羅ごう剣が掲げ上げられ、まだ絡まってくる触手を薙ぎ払いその返し手で、グルンガストに照準を合わせてくる4門のメーザー砲の一番正面に任る1門を一閃する。
『ォオォオォオォーーーーーオォオォオーーーーンンンン…ッ』
すると、再び巨体を震わせ低くそして大きな唸り声の様な音が鳴り響き、イルムは眉を顰める。
先ほどとは事なり、その音は超震動波をも発生しているらしく、同時にグルンガストの機体が軋む程に震え、そしてコクピットの中のイルムの脳にダイレクトにその震動も伝わり、まるで脳を掻き回され様な感覚に陥り、一瞬眩暈を起こしたのだ。

「く…そ…っ」

クラクラする頭を軽く左右に振ると他のメーザー砲の照準から回避する為に、無意識のうちに指はその状態でもコンソールの上を滑って行く。
超震動発生浴びたグルンガストのコンピューターの一部はシステムダウンし、マニュアル操作に変更しなくてはならなくなったが、もともとマニュアル操作に慣れていたせいか、直ぐにシステム変更をする事が出来、更にはそれに対応した操作は容易かった。
しかし、モニターもコンソールもシステムダウンした部分を表示したままであったし、警告音は鳴りっぱなしの状態で総ての操作を行わなくてはならない。

「今の攻撃でシステムダウンしたとこって、コクピット内の環境制御してるとこばっかじゃねえか…っ」

モニターの片隅で点滅しているレッドシグナルは、エアシステム、生命維持装置、脱出装置、照準レティクルシステム等で、殆どがコクピット内の環境と戦闘に必要なシステムだった。
エアシステムがダウンしたと言うことは、このまま長時間の戦闘に及べば、機体の廃棄熱がコクピットを熱し続け、グルンガストを起動させているコンピューター総てがダウンするだけでなく、パイロットである自分の生命をも危ぶまれる状態になってしまう。

「こんなところで… 死ねるか…よ…っ!」

イルムは口の中で呟くように叫び、召喚した計都羅ごう剣を掴んでいない方の腕を掲げ上げ、再び今度は至近距離からのブーストナックルを、幾つもの触手が出ている上部円環へ向けて放った。

グルンガストの機体が、ブーストナックルを発射する反動で一瞬揺れる。
コクピットの中でその振動を受けながらイルムは次の手を考えつつ、コンソールパネルに伸ばした手を忙しなく動かし続けていた。
マニュアル操作ともなると普段の倍以上の手間が掛かるため、僅かだが余裕が無くなってしまうのだ。

「よっしゃぁっ!」

マニュアル操作したブーストナックルが、上手く敵機の上部円環部を貫き、何本かの触手を薙ぎ払う事に成功した為、思わずトリガーを握っていた手に力が入った。
コクピット内の気温が上昇し始めているのか、長い髪が汗で首筋にまとわりつき、額には僅かに汗が滲んでいる。それでも敵機からの攻撃のパターンをはじき出すモニターの解析画面と睨めっこをしている為に、その汗を拭っている暇はない。
パタパタと汗の滴がコンソールやシートに落ちる。

「…!」

先ほどの敵機から響いた超振動波を発生させた轟音というか、唸り声の解析が出来たことを示すデータが解析モニターに映し出される信号音に目配せ、その結果にイルムはギリッと歯噛みする。

「やっぱり…俺の感は間違っちゃ…いなかった…っ」

しかし、その結果に対応出来る手札がこちらにある訳もなく解析データを横目で睨み、イルムはただ歯噛みするしかなかったのだ。
と、その時だった。イルムはモニター越しの敵機を凝視し、信じられない光景を目の当たりに絶句する。

「おいおい… そりゃあ…反則だろ…」

レットシグナルに彩られたモニターに映し出されたのは、自己修復を行いグルンガストが今まで攻撃してきた部分が元の形に再生されて行く敵機の姿だった。
スローモーションで逆回転再生されていくように、触手は総て元通りになって行き、薙ぎ払ったメーザー砲ですら元通りの姿に戻って行く姿に、流石のイルムも焦りを覚え出す。
しかし、ここで眼前のこの敵機をグルンガスト一機で倒さない事には始まらないのだ。
そう。現在、他のパーソナルトルーパーは基地周辺に出現した、また別の敵機と交戦中な為に応援要請は望めないのだ。
コクピット内の温度がじわじわと上がり、モニターやコンソールが悲鳴を上げているかの様に真っ赤に点滅している。

「くそ…っ 諦める…か…っ」

イルムはモニター越しの敵機を睨み、悪態を吐きつつコンソールに映し出された機体のエネルギー残量の確認をすると、握り締めていたトリガーの赤いボタンの安全装置を外し、そのまま押し続けたままの状態で、

「計都羅ごう剣っ! 暗剣殺っっ!!!」

そう叫ぶと、召喚してあった計都羅ごう剣を掲げ上げ、正面の敵機へその刃を向ける。
そして、轟…っと言う爆音が響くと、グルンガストと敵機を轟音と目映い光が飲み込んで行った。





しゅうしゅうと水蒸気や黒煙を上げ、グルンガストが大地に横たわっていた。
機体の至る所から火花が飛び散り、無数の亀裂が入った巨体には数え切れないほどのドリルが刺さっていた。
グルンガストの攻撃を敵機も当然ながら読んでいたのだろう。
その攻撃と同時に、敵機は全触手をグルンガストへと向け、その先端のドリル部分のみを一気に射出したのだった。
一方、敵機もグルンガストの攻撃で多大なダメージを受けたのか、宙空に浮遊するのが精一杯といった状態で、触手をゆらゆらと揺らしつつゆっくりと上空へと上昇していった。




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